死が満ちた場所

その場所は一際荒れていた。

建物は殆ど崩れている。

地面も抉れ、辺りには機械やら薬莢やら武器やらがそこら中に転がっている。


「とても散らかっていますね。」


そんな感想を述べたのは人ではなくドローンだ。

電子レンジくらいのサイズの黒い箱に4つプロペラのようなパーツがついたデザインの大型のドローン。


「酷いもんだね。」


そう感想を述べたのは人間の少年だ。

黒いズボンに黒いTシャツ、その上から薄手の灰色のパーカーを着ている黒髪の少年。


「停止したのはだいぶ前みたいです。」


周囲の残骸をドローンはふわふわと飛行をしながら観察して回る。


「まだ栄えてた時の物だろうね。」


落ちている武器を適当に拾い上げ観察しながら少年が言った。


「人は争う事が好きですよね。」


「否定しきれないなー。」


ドローンの発言に苦笑いを浮かべる少年。


「貴方様も争う事が好きなのですか?」


「いや、俺はそんな事ないよ、痛いの嫌いだしね。」


「そうですよね…好きな人なんているのでしょうか?」


「うん、一定数はいるだろうね…確実に。」


「そうなのですか。そう言った人が争うのでしょうか?」


ドローンが周囲の観察を止め少年の近くに帰ってくる。


「それはちがうんじゃないかな…そもそも争う事が好きな人なんて希だよ。」


「それにしては人は兵器ばかり作っているように感じるのですが。」


「そうだね……なんでだろうね?」


「わからないのですか?」


「全然。」


少年は笑顔でそう言った。

それを見てドローンはわざとらしく息をつくような演技をする。

それを見て少年はもう一度笑った。


「せっかくだしお墓作ってあげようよ。」


「土に埋めるのは余り良くないと思いますが。」


「さすがに埋めないよ。」


「どうするのですか?」


「そうだなー……。」


腕組みをして考える少年。


「ここにある部品を使って墓標を作る……とか?」


「良いとは思いますけど、アレとか運べますか?」


残骸で1番多い兵器は大型のロボットが多くとても人に運べそうな物ではない。


「まあ……部品の1部だけお借りしよう……ネジとか……。」


「妥協案ですね。」


「とにかくやるだけやろう、道の掃除もね。」


「夜までかかりそうですね。」


ドローンの予想通り作業が終わった頃には夜になっていた。


「まあこんなもんでしょう。」


「歪でますね。」


「まあ使った部品の種類も大きさもバラバラだから。」


一人と一機の前には形が歪な十字架が立てられている。

少年はその前で手を合わせる。

ドローンも少年を真似て手を合わせた。

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