ダイナマイトバディがパーティ参加!

3人目の仲間

「とは言っても、この量は尋常じゃないだろ?」

「そうね。確かに結構な量食べたかしら。でも、どうぞ、って言われて食べてるだけ。他人にとやかく言われることじゃないと思うんだけど」

「じゃあ、さっきまでここにいたイーノとかいうのはどうなんだ?」

「どうって言われてもねえ」


 さっき俺が運んだ皿から料理をつまみ上げながら、

「別になんでもないわよ。さっきも言った通り一人じゃつまらないから、話し相手になってただけ」

「ふーん。随分と親しそうだったけど」


「それは向こうが、でしょ?」

「ディヴィさんは何とも思ってない?」

「だってねえ。こんな田舎の村長の息子じゃあ、アタシに釣り合うと思う?」

 割れ鍋に綴じ蓋という言葉が浮かんだが、口に出すのはやめておこう。


「それにさ、一応、やらなきゃいけないことがあるのよね」

「この世の全ての物を食い尽くす、とかじゃないよな?」

「馬鹿ねえ。ううん。意外といい考えね。そうじゃないわ。人探しをしてるの」

「へえ、じゃあ、食事が終わったら、ここ出て行くわけだ」

「まあ、でも、積極的にやりたいわけじゃないし、命令されてるからやるだけなんだよね」


「あ、俺と一緒だ」

「そうなの? シューニャさんも誰かに強制任務につかされてるんだ」

「まあね」

「それってアタシとおしゃべりすることじゃないよね。こんなとこで何してんの?」


「宿借りようとしたら、まあ、ちょっと様子見て来てくれって頼まれてさ」

「ああ、要は追い出しを頼まれたわけね」

 退治を頼まれたというのが正解だが、これも黙っておこう。

「治療代としちゃ、食べすぎってこと? ついつい食べ過ぎちゃうんだよね」

 そう言いながら、舌を出している。


「じゃあ、これぐらいにしておくか。あなたとやりあうのは疲れちゃいそうだし」

「そうしてもらえると助かるな。俺も力づくで追い出す真似はしたくない」

「あら? 私を排除できるつもりなんだ」

「もちろん」


「まあ、そういうことにしておいてあ・げ・る。結構食べた今ならいい勝負できると思うけど、得すること何もないもんね。それじゃ、行こうか」

 ディヴィは大人しく席を立つ。今まで見えなかった下半身もたいしたものだった。はちきれんばかりのボリュームである。全体的にほっそりしているノアゼット様とは対極的なシルエットだった。


「料理に満足されたかな?」

「まあまあね。もう少し欲しかったけど、こちらの彼が来ちゃったから、そろそろ失礼するわあ。じゃあねえ」

 ディヴィは村長に手を振って歩み去って行く。


 そこへ、ちょうど、ノアゼット様が顔を出した。

「シューニャ、用は済んだのですか?」

 その声に振り向いたディヴィはしばらくノアゼット様を見つめていたが、きゃーという叫び声をあげて、ノアゼット様に突進する。


 俺は猛ダッシュでノアゼット様の側に寄り、ディヴィの前に立ちふさがった。

「なんの真似だ。止まれ!」

 両手を上げて、組み付こうとしているように見えたディヴィが3メートルほど離れたところで止まる。


「なによう。別に危害を加えようってんじゃないわ。その子、究極魔法ってのを習いにいくとこでしょ?」

 いきなり、ド核心を突いてくるディヴィ。ノアゼット様が息をのむ音が背後から聞こえる。


「クラウス様の言いつけで、旅してるんでしょう?」

 なんで、こいつがそんなことを知っているんだ? ますます警戒を強める俺を見て、ディヴィはあっさりと言う。

「アタシの任務ってのはね、その子の護衛なんだよ」

 はあ?


 そして、今、さっきまでノアゼット様が休憩していた部屋で、俺達3人は顔を突き合わせていた。ディヴィがノアゼット様に事情を話している。デイヴィは元はクラウス様に使える天使で、あるとき、食事の量を巡って同僚と大げんかをやらかした挙句、クラウス様の元を追放されたそうだ。で、その贖罪の為に、この任務を与えられたと。


「ということで、ノアゼット様、よろしくぅ」

 随分とノリが軽いな。

「分かりました。よろしくお願いします」

「マダム。そんなに簡単に信用していいのですか?」


「出立前に道中3人の者を護衛の為に用意しておくとの神託を受けました。ですので間違いはないと思います」

「いや、でも、コイツがその護衛だとは限らんだろ?」

「いえ、ウソをついていたら分かります」

 自信ありげにいうノアゼット様。服の上からペンダントを握りしめている。


 そういうことか。便利なもんだな、あのペンダント。

「じゃあ、逆にディヴィさんはどうしてノアゼット様のことが分かったんだ?」

「あら、簡単なことよ。だって、それだけの魔力を体内に納めてるなんて普通じゃありえないもの」


「他人の魔力が分かるのか?」

「え? あなたは分からないの? ふーん、そうなんだあ。まあ、一定の魔力を持っているもの同士じゃないと感知できないから。あなたは、魔法は使えないのよね?」

 ふん。魔法は使えなくても、色々特殊なスキルあるんだぞ。まあ、実際のところ、魔法は使えないんだがな。


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