水竜パズー
翌日目が覚めると、もうノアゼットちゃんは身支度を終えて、神に祈っていた。く、不覚。早く目覚めて寝ているふりして着替え見ようと思ってたのに。向こうは馬乗ってるのにこっちは徒歩だからな。疲れがでたみたいだ。まあ、またチャンスもあるだろう。さっさと俺も気がえようか。
宿を出て街道を行くとすぐに上り坂になった。今日も日差しが強くて暑い。あちー。だらだら坂を上り切ると大きな川に出る。ノアゼットちゃんを木陰で休ませておいて、俺は馬の体を洗ってやるべく川に連れて行った。このアホ馬、はしゃいで水を跳ね飛ばしやがったので俺まで濡れてしまう。
一旦、荷物のところに戻ると川から何かが飛び出し、馬を丸のみにしてしまう。水色の竜だった。つーか、恐竜? 毛のない水色の肌をして、強大な胴体から長い首が伸びている。手足はなくヒレのようだ。そいつは馬だけでは満足できなかったらしく、メインディッシュにノアゼットちゃんを頂こうと襲ってきた。
耳から、ハルバードを出し、竜の前に立ちふさがる。伸ばしてきた首に刃を叩きつけようとしたが意外と素早くよけられる。その空振りの勢いを利用して、柄を頭に叩き込んだ。ぐわーん。うお、硬いな。一応、攻撃は効いているらしく、少しふらふらしている。追撃しようとしたらバシャンと水の中へ逃げ込んでしまった。くそお。
「シューニャ、その武器は?」
「ああ、神様にもらった」
「以前もそうでしたが、急に出てきたように見えましたが?」
「自由に大きさを変えられるので、普段は小さくして耳の中に入れてます。こんな風にね」
「そうなのですか。それでその武器で先ほどのドラゴンは倒せそうですか?」
ふうん。やっぱ、あれでもドラゴンなんだ。
「水の上に出てくれば倒せそうですが、水の中に逃げられてしまいました。水の中ではちょっと不利かもしれません」
がっかりするノアゼットちゃんに言う。
「まあ、でも問題ありません。この隙に空飛んで、この川を渡ってしまいましょう」
「私は空を飛べません」
「私が背負うなり、抱えるなりしますよ」
「どっちも嫌です」
はい。即答したよ、この人。できる。俺の邪な思いを見抜くとは。
「決して触られたくないというのもありますが」
うん、知ってた。
「この旅では、空を飛んだ場合、資格を失います」
そーいえば、昔、神様がそんなこと言ってたな。
「でもよ。もうちょっと下流に行けば、浅いとこあるかもしらんけど、この水量じゃ徒歩は無理そうだ。どこかで馬を調達しないと」
「探しに行く間に、さっきの竜に襲われたらどうしたらいいのです?」
「じゃあ、どうすんだよ。昨日の村まで戻るのか?この暑い中?」
「あのー、お取込み中すいません」
「なんだよ。こっちは今忙しいんだ?」
声の方を向いてみると背中に白い羽の生えた赤毛の天使がいた。たぶん、天使だな。だよね?
「私はクラウス様にお仕えするアリエルと言います」
ノアゼットちゃんは跪いてアリエルを拝みだす。
「で、何の用?俺ら助けてくれるの?」
「シューニャ、なんと失礼なことを」
「いいのです。私が川を渡る出助けをしてもいいかは判断できません。が、ここで、ドラゴンからノアゼットさんを守るくらいならできます」
なんだよ。指示待ち族かよ。仕事できねえ奴だ。それぐらい自分で判断してくれよな。
「神様のところで聞いてきてくれよ」
「それは指示に反するのでできません。あなたが聞いて来てください」
メンドクセエなあもう。まあ、仕方ない行ってくっか?
「で、どこ行けばいいんだ?」
「ノアゼットさん、ペンダントを握ってクラウス様に呼びかけてみてください」
ノアゼットちゃんが、服の中から高価そうな宝石のついたペンダントを取り出し、言われた通りにすると、ペンダントから一筋の強い光が西に向かって真っすぐに伸びる。
「この光を頼りに進んでください」
俺は空に飛びあがり西へと進む。4時間ほど飛び続けると壮麗な宮殿が見えてきた。ひと際高い建物があったので、神様だったら高いところにいるだろうと見当を付けて、そちらに進む。すると、わらわらと武装した天使がやってきて、行く手をふさいだ。
「何者だ?ここを通すわけにはいかん」
なんだとおお? 疲れも加わり、怒りが沸き起こる。強行突破しようと思ったら、聞き覚えがある声が響き渡る。
「よいのです。その者を私の元へ」
天使たちに囲まれるようにして、高い建物に向かって進む。そのてっぺんに奴がいた。
「シューニャよ。久しぶりですね」
「ああ、こんにちは。んで、アリエルとかいうのにここ来るように言われたんだけど」
「なるほど。そういうことですか。では、私が行って手助けをしましょう」
お、話が早いや。
神様と一緒に川岸に戻る。帰りは10分もかからなかった。何この能力の差?
「水流パズーよ、出てきなさい」
神様が呼びかけると、大人しくさっきのドラゴンが出てきた。
「さきほど食べた馬を返しなさい」
「クラウス様。それは無理っす」
なんだよ、このドラゴン話せるのか。
「あれは聖なる任務についた者の大切な馬だったのですよ」
「知らなかったんす。さーせん」
「では、その償いをしてもらいます」
神様が呪文を唱えてドラゴンに触れると、ドラゴンはどんどん小さくなって1頭の馬じゃなくてユニコーンになった。色は水色のまま。
「マジすか。勘弁してくださいよ」
神様がユニコーンの口に触れるとヒヒンという声しかでなくなる。
「これでいいでしょう。では帰りますよ」
「ちょっとまった。少し教えてくれ」
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