やったね。パーティリーダーは金髪美少女だよ

出会い

 6畳間の格子の外に人影が立つ。俺は格子に飛びついた。見ると最近みかけるようになった猟師だ。

「よう。元気か?」

「まあね。変な大声出されて、連れが怖がって困ってるんだけど」

「連れ?こんな山奥に珍しいな」

「ああ。神様を訪ねてはるか遠くまで行くという方でね」


 ああ。やっと来たか。俺のクエストの相手が。猟師の陰になっていた者が進み出る。キター。金髪美少女。これは滾るぜ。

「待ってました。私があなたの旅を護衛する者です」

「このような中にいて、どのように護衛するのでしょうか?」

「祈りをささげてこの格子に触れば、俺は出られるんだ。そう神が言ってたぜ」

「分かりました」


 神妙な面持ちで祈りをささげる美少女。うお、かわええ。

 そして、その手が格子に触れると格子に無数の亀裂が入って崩れ落ちた。やった、外に出れる。

 俺は何年かぶりに外の空気を思い切り吸う。やっぱシャバの空気はうまいぜ。おっと礼を言わなくちゃな。


「えっと、俺はシューニャ。出してくれてありがとな」

「私はノアゼット。クラウス様の導きで旅をしています。私の護衛をしてもらえるというのは本当ですか?」

 クラウス様?ああ、あの神の名前かな。

「ああ、出してもらえたしな。任せてくれ」


「それで、シューニャさんは服は着ないのですか?」

 やべ。すっかり忘れていたが、俺はフルチンでは……ない。腰から下だけはなんかの毛皮で覆っている。あの猟師がくれた物だ。男のアレは見たくないとかで。

「ああ。修行の一環でね。大地やなんやらの魔力を集めやすくなるんだ」

 適当なことを言うと、相手は感心している。


「でも、旅の途中は何か着てもらえますか?」

「おう。どこかで手に入れ次第、着ることにするよ」

「そうしてください」

「つーことで、あとは引き受けたからあんたはもう帰ってもいいよ」

「それじゃ、よろしく頼みましたよ」

 気のいい親切な猟師は帰っていく。


 これで、俺はこのノアゼットちゃんと二人きり。よっしゃー。がんばるぞ。ノアゼットちゃんが乗る馬のくつわを取り歩き始める。しばらく進んで、夕暮れが近づく頃、道の両側の木立の中から、バラバラと人影が飛び出してきた。

「命が惜しかったら、金と荷物を置いてきな」


 お、早速アホどもが現れたな。ここはいいとこ見せないと。振り返ると顔面蒼白になっているノアゼットちゃんに声をかける。

「大丈夫です。お任せください」

 そう言って、前に進み出る。


「おう。こりゃあいいや。その女と金目のものを置いて、とっとと失せな。俺らは心が広いからな。命までは取らねえんだ」

 そう言って、ガハガハ笑う山賊たちに、

「奇遇だねえ。俺も心は広いんだ。今までの稼ぎ半分寄こしな。そしたら見逃してやる」


「なんだとお?どうやら死にたいみたいだな。やっちまえ」

 あれ?なんかもの凄いデジャヴのような。切りかかってくる山賊をかわすと、久々にハルバードを取り出す。よう、相棒久しぶり。

 あっと言う間に30人近くいた山賊どもが血まみれの死体になった。死体を改めると合わせて銀貨が数枚と銅貨がちょろっと。しけてんな。


 頭領らしき男の革袋にかき集めた金を入れて、ノアゼットちゃんのところに戻る。褒めてもらえるかと思ったら、いきなり怒られた。

「何も命まで奪うこともないでしょう?」

「は、何言ってんのお前。俺がいなけりゃ、今頃はあいつらに玩具にされてんだぞ」


「何を言ってるか分かりませんが、この旅は聖なるクエスト、無益な殺生は許しません」

「いやいや、向こうが襲ってきたのに仕方ないだろが」

「あなたのように強ければ、命を奪わずともなんとかなるでしょう?」

「あっそう。じゃあ、俺はこの旅にふさわしくないわけだ。パーティ解雇ですね。んじゃ、さよなら」


 空を飛んで元来た方向に向かう。なんか、前にも助けた女の子につれなくされた気がする。遠い昔のことだがな。まあ、いいや。これで俺は晴れて自由の身。向こうが断ってきたんだから、クラウスだかなんだか知らんが文句は言わせねえ。お、川がある。ちょっと返り血浴びたの流していくか。


 暗くなりつつある中、毛皮のパンツを脱ぎ棄て、川に入って体を洗う。汚れを落としてさっぱりすると心も落ち着いてきた。あのアホ神じゃ、問答無用でクエスト放棄のペナルティ与えてくるかもしらんな。なにすっか分かんねえし、やばい。それに、ついカッとなっちゃったけど、あんな可愛い子一人にしていいのだろうか?ほっといたら……。

 

 仕方なく、パンツをはいて、また、空を飛んで戻る。濡れた体はすぐに乾いた。お、なんだ。まだあの場所にいるじゃん。やっぱり俺が戻らないとどうしようもないって気づいて待っていたんだな。ちょっとうれしくなって、ノアゼットの目の前に降りる。それが更なる悲劇の始まりだとも知らずに。


 





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