2話 まずは自分たちの状況を知る

「私も、一般ユーザーとして当選して、『LINK SPIRITS』を手に入れたんです」


リーラちゃんの話は大まかにいえばこうだった。

まず、彼女も俺と同じように配信される前から『LINK SPIRITS』を起動させていた。そして配信直後、ゲーム開始時のアバター設定をし、スタートするステージを選んだのだという。ゲームがスタートしたら、各プレイヤーは『別の世界からやってきた救世主』として選んだスタートステージに降り立つはずだったそうだ。

「でも私はこの村の娘として生まれました。自分が別の世界のゲームプレイヤーだって思い出したのも2年前。その間もその後も、何一つ救世主として戦うイベントは起きなかったし、ほかのゲームプレイヤーにもあったことが無かったんです」

「ゲームの不具合……?にしちゃあ変だよな。ゲームからログアウトとかしなかったん?」

「……ウタさん、今、『俺はゲームを終了する』って、強く念じてくれませんか?」

ゲームの説明だとそれで終了するはずですから、と言われ念じてみる。えーと、『俺はゲームを終了する』?


……


…………


………………



「あれ?なんも起きない……」

リーラちゃんはですよねと言って、泣きそうな顔をした。

「私、思い出してからずっと、何度も念じました。でもダメで……お爺様のことは好きだけど、もう、元の世界にはもどれないのかなって……でも」

「でも?」

「ウタさんが……現れてくれた」

そこで一旦区切ると、彼女は溢れそうになった涙を拭った。今まで聞いた話だと彼女はゲームの説明とは違う状況に陥った上に、このことを話せる人間には1度も出会えなかったのだ。俺が来たことによって、ほんの少しだけでも安心したんだろう。不謹慎だが涙を浮かべた姿も実にかわいい。


「グスッ……実は、ウタさんがウチの教会の前で倒れていた前の晩、帝国王都の方で事件があったんです」

「事件?」

「それが、この世界の……」


リーラちゃんの言葉は続かなかった。

凄まじい爆音とそれに伴う衝撃が俺たちを襲ったからだ。


ドォォォン……!!


部屋の窓の方が嫌に明るい。外を除けば、ここからほど近そうな場所にある森が燃えている。そしてその上空には

「……飛行船?」

「あれ、帝国軍の持つ戦闘用飛行船です!でもなんであの森に……!?あそこには、たくさんの動物さん達がいるのに!!」


リーラちゃんの発言と長年のゲーム脳の勘によってよく知りもしない国を敵と認定した!


「よし、助けに行こう!」

「ふぇ?!」

「だって、リーラちゃん言っただろ?あそこにはたくさんの動物がいるって。それに」

「それに?」

「あーいう場合って、『主要人物』を敵が追い詰めてて、行かなきゃまずいとと相場で決まってるんだよ!」


言うが早いか、俺は部屋を出、森の方へと走った。慌ててリーラちゃんも着いてくる。エルマー神父とすれ違い呼び止められたが、スルーさせていただいた。なんて言うか、何となくだけど、俺が行かないとダメな気がしたんだ。ほんとごめん神父様、後でちゃんと謝るんで!





轟々と燃える森が近づくと、銃声と抵抗する女性の声が聞こえてきた。俺とリーラちゃんが声のする方へ向かうとそこには


「くっ……姫様に、近づくな!クソ狂信者どもが!」

「フン、最下層階級ルケードのメスガキ如きが生意気な。さあ、キャロライン王女。その竜と共にこちらへ。王宮へ帰りましょう!」

「いや!」


二人の少女が、鎧兵団に囲まれていた。

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