( 5 ) はじめてのゲーム

その時は、突然やって来た。


小学生6年生の頃だ。


その教室の床は、真四角の板がしきつめられていて、出来ていた。


「まあ、だまって見とけ、」

と、板1枚に対し、1枚のカードを置いていく。置いているのは、私は見かけたこともない男子で、なんか、いばった口調のやつだった。


「わかんないだろうから、ルールを教える、」


だまってルール説明をきいていたが、誰が、そんなゲーム

知るか!という感じの知らんゲームだった。


「おもしろいんでしょうねー?」

と、私も負けじといばってみた。


「まず、このカードから表にする、」


と、1枚、やつがめくると、スペードだった。



。。。。。。。。



そもそも、なんで、よくわからん知るか!という感じの、一応はカード(トランプ)ゲームをしているか、

は、


こんなことがあったからである、


よくある、転校生あるあるである。

しかも、よくないことには、小6で転入して来た、という、なんともしょうがないというか、みんなもうあきらめて、あまり気にとめないように、仲良くしましょうね、と思って、私は、その子とも普通に話したりして、何も起こらないものだと学校での日々を送り、やがて来た夏休み中も、懲りずにムダやる気を発揮し、

チェス、

将棋、

カード、

と格闘し、そして、

囲碁、

もしくは、煮ものの開発、

に、いそしんで夢中だったので(?)、夏休み明け、教室に入ってみると、様子がおかしいことに、すぐには気づかなかった。


「あれ、どう、し?何かいつもと違う?同じ?そうじか?机どうしちゃって?」

誰にともなく、たずねている私がいた。



ああろちゃんは、下を向いていた。でも、よく見ると、床のガムのあとみたいに、黒くなってるところを、うわばきでこすっているだけだったのを私は知っている。


誰かガムかんでたことがあった、

ということの方が気になるし、私は、おもしろいのだが、、、、!



ああろちゃんが、転校生である。



そして、何だかムっとしている男子が変に離れて、いる。


というより、机が、片方によせられてしまっているのは何なのか、他のクラスメートたちにくわしく聞く雰囲気ではないことがイラだつ。


しばらく様子をうかがうことにした。


。。。。



「愛想がないんだよ!」


大きな声がきこえた。

ああろちゃんに向けられていた。


のちに、ああろちゃんは、愛想って言葉、古いよね、と言っている。

なかなかな子なのである。


「下、向いてないで、何か言えよ!」


大きな声は続く。

声をたどると、うちのクラスの女子で、いや、男子で、2人? 3人? くらいの固まりが、何やら怒っていて、正直、どうでもいいな、と私は思った。


そもそも、言いがかりなのか? 言いがかりじゃないのか? を見守ろうと決めたが、どちらか判断がつく前に、離れて、いて、ムっとしていた男子が、割って登場して来た。


「見た目や、雰囲気のことを言うのは、意味がない。何か決着を着けたいのならば、僕のゲームを使わないか?」


何だそれ、とんでもなく良いこと?外れた提案?!を言うやつだなあ、じゃまだなあ、あ、誰がじゃまだ? 今、誰が正しくて、誰がまちがってるんだ? 何今(なにいま)?

お、こっち見てんな、


「お前、いじめられっこっぽくなってるその女子の代わりに、ゲームで戦え、」


何今(なにいま)?なのに、いじめ固まりとは別に、ゲーム男子に勝負をたたきつけられる展開に!


いじめ固まりと、ゲームの接点、ここにいる誰もピンと来?


「このゲームオタが勝ったら、いじめっこいじめるのやめろよな、じゃあ、始める、」


私のこと、ゲームオタって言ってるんですけどー、

私が、いわゆる古典ゲームと言われるかもしれない(?)あたりの4大頭脳優先ゲームを研究と称して、ただ遊んでいるのをなぜ知っているー??


ややびっくりと、なぜか決まりが悪いので、口をつぐんで、ゲーム男子と向かい合うことにした。


だいたい、お前も、ゲームオタに違いなく見える言動だがな!



。。。。。。。。



道路に、裏返しのトランプがポソリと落ちていることが、よくあって、表に返すか? やめとくか? と思いながら、立ち止まっては返したり、時には通り過ぎて、あれは何のカードだったか? としばらく気になって、返して見てみればよかったと、夕飯時に無口になったりしたものだ、が、


こいつのこのゲームは、教室のフロア板(正方形に近い) に1枚ずつ、同じ間かくに、ていねいに並んでいて、自分で返してみようとは、あまり思えないが、ゲームというなら、話は違う、


「じゃあ、これにする、」


やつの返したスペード

のとなりに、

自分の手前の板にあったカード

を返しながら置いて、

もともとその板にあったカード

をうらのまま空いている板に移動した。


返したカードは、ダイヤだった。



。。。。。。。。



学校からの帰り道、私は、ああろちゃんと一緒にいた。ああろちゃんの手には、やつの用意したカード組がある。1枚だけ私も手にしながら、


「あいつも、負けをすぐ認めるとは、なかなか悪い男子でもないのかもねー、それ、ほんとにいるの?」


「なんか、記念にする」


「ほう、たしかに、私も知らんゲームしたの、おもしろかったなー、しかも勝てたし、」

と、カードを見る、「やつ、うしろの方の席だったのかなー?」


「違うクラスだよ」


「! ああろちゃんの方が、よく知ってるじゃんかー」

と、ああろちゃんの持つカードたちに、私手(わたしで)の1枚を乗せる。


つまり、小6で転入しても、小1からいる私の方が知らんことだらけで、


よくある、転校生あるあるでは、なかったのである、

と、言えるのである。






















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私、丼と罠と浮く ナナヨウコココ @nako168

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