第20話
その姿は異様であった。
「い、イノシシッ!?」
その異様な集団は日本で見る動物のイノシシに類似する様相の頭部をもっていて槍や剣、弓矢等武器を所持していた。
「オーク……ですかね?」
「にしたってなんでこんなところに……」
イノシシ頭の集団は、逃げようとするハイエナ狼を追い回し数の暴力で蹂躙していく。それは剣であり、槍であり、爪であり、矢であった。
「ガァァァァァァァァァァアァァァッ!!」
ベヒ美も思わぬ援軍に負けじと高らかに咆哮を上げると巨大ハイエナ狼の喉元に噛みつき思い切り振り抜き地面に叩きつける。
「キャウンッ!?」
巨大ハイエナ狼は叩きつけられ暫くもがいていたものの、ベヒ美の全体重をかけられ、やがて動かなくなった。
「ガァァァァァァァァァァアァァァッ!!」
ベヒ美が勝利の咆哮を空に向かってあげる。それに続くようにハイエナ狼の首を天高く掲げて勝利の歓声を上げるイノシシ頭の集団がそこには立っていた。
その光景にポカンとしているタカシとアリシアであったが、二人にきずいたようでイノシシ頭の一同がこちらをじっと見つめていた。思わずタカシ達は身構える。
やがてそのうちの一人がこちらに歩いてくる。その後ろには先程の大鷹が止まっていた。
「大丈夫か?私たちとしたことが荷車で寝過ごすとは……危うく狼の餌になるところであった。ありがとう。助かった」
イノシシ頭の被り物を外し、タカシ達に手を差し伸べる。その姿は少女であった。まだあどけなさが残る少女であり、年齢は見る限り中学生くらいの容姿で栗色の髪を後ろでひとまとめに結っており、恰好はぶかぶかのサイズ大きめの白いTシャツの様な服の上に分厚い毛皮を纏っていた。
「むッ?あぁ我々の恰好は冒険者には少し珍しいかな?」
タカシ達が物珍しい目で見ていたことに気がついたようで少女は笑う。
「いやぁ……荷車が襲われているから助けにはいろうと、したつもりでしたけど逆にこっちが助けられちゃいました。ハハ……デジャブ感あるなぁ」
「あ、ありがとうございました。助かりました」
アリシアが遅れて少女に頭を下げる。少女は「気にするな」と笑いながら荷車にいるイノシシ頭の集団について話してくれた。
「私たちはオークを中心にした集まりでな。チーム名を〝うりぼうズ〟という。田舎の森から出てきたばかりで右も左もわからんかったんだが運よく道中奇遇にも行商人の荷車に出くわしてな。同行させてもらっていたのだが、まさかこんな事になろうとはな」
「オークってあのオークか。でも君は人間だろ?えっと……」
「エレノアで構わない。いや私は捨て子でな、オークに育てられたからこうやって一緒に生活している。といってもオークは以外にも温厚な種族だからないいやつと分かればだれでも受け入れる。だからこの中には人間もいればエルフも属している」
確かによく見れば本物のオークもいればイノシシの仮面をかぶったものも少なくはない。
「立ち入った事をきいてしまった。すまん。俺はタカシ。んでこっちはアリシアさん。
んであのでかいモンスターがベヒ美。それでさちょっと聞きたいんだけどギルドのある街ってどっちかわかるか?」
タカシのその言葉にエレノアが目を見開き、そして僅かにほほ笑んだ。
「へぇ……私たち以外に獣を使役する人間がいるとはねぇ……しかもありゃダンジョンモンスターだろう?私も本で読んだ事ある程度なので詳しくは知らんが。まさか本物が見れるとはな。一体どうやって……まぁ、今はいい。私たちも丁度街に向かうんだ。よかったらついてくるか?」
「本当か?けがの功名ってやつだなッ!いててッ……」
「タカシさん……無茶しないでください」
僅かにテンションを上げ立ち上がり痛みに顔をゆがめるタカシの体を支えるアリシア。
その姿を見てエレノアは高らかに笑う。
「ハッハッハッ。いいね、元気だね。んじゃ日が暮れる前に早々に出発しようか」
「おう!」
こうして思わぬ荒野での出会いがきっかけで彼らは街へ案内してもらえることとなったのであった。
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