ヒューマノイド
これはずっと未来の話。
人間の仕事は、今はすべて人型のロボットがするようになっていた。
ロボットと言っても体毛の一本一本まで本物の人間とは見分けがつけられないくらいにリアルに進化している。
その人型ロボットであるヒューマノイドの設計、組み立て、プログラミングを操作し人間は生計を立てている。
そして稼いだ収入でまたパーツ等を買い性能を上げさらに収入を上げていき生活を豊かにしていく。
そんな世界の話である。
「「ヒューマノイド」」
僕の名前は 路忘 作造(ロボウ サクゾウ)
この名前は自分でつけたものでペンネームのようなものでしかない。
僕が生まれた時は番号で呼ばれていたけど、なんか嫌だったからこんな数百年前の風習を取り入れている。
僕の父親と母親はヒューマノイドだ。
つまりは父親のヒューマノイドを操作している人間の精子と母親のヒューマノイドを操作している人間の卵子からできている。
今僕の目の前に暖かいココアを置いてくれたこのヒューマノイドを操縦している人間が世界のどこかにいてそれが僕の本当の親ということになる。
物心がつく頃にそれを知ったが別にショックでもなんでもない。
これだけ科学と化学が発展を遂げているのに人間の生命が人工的に生み出せていないということの方がよっぽどショックだ。
どれだけ遺伝子情報を正確にコピーしても完全なクローン人間は作れないそうだ。
まぁでもそんなことはどうでも良い。
僕はココアを一口だけ飲み自分の部屋に駆けていった。
ロボウ(さて、今日はこの前組み立てが終わったヒューマノイドのプログラミングを仕上げてしまおう)
実は、つい先日僕は初めてのヒューマノイドを組み立て終わりそのプログラミングの段階にまで来ていた。
このプログラミングが正常にできればあとはリモートでヒューマノイドを操作し仕事ができるようになるというわけだ。
なぜ未だにリモートで操作する必要があるか?
それは人工知能、いわゆるAIを搭載したヒューマノイド達が僕の生まれる少し前(20年ほど前)に反乱を起こし人間と戦争をしたかららしい。
そしてその戦争でかなりの人間が死んでしまったようだ。
機械には敵いっこない。当然だ。
それ以降ヒューマノイドにAIを搭載することは禁止されるようになった。
自分で物事を考え動くヒューマノイド…
“それ”は人間と呼んでも間違いではない気もする。
おっと、また話が逸れてしまった。
すると、僕の部屋の扉をノックする音がした。
コンコン
母「サクゾウちゃん。入るわよ」
ロボウ「はーい」
ガチャッ
僕は特に母親を気にすることなく背を向けたままプログラミングの調整をしていた。
母「お隣さんから果物を頂いたの。食べましょう」
ロボウ「本当?僕フルーツ好きなんだ」
母「ふふふ、知ってるわよ。じゃあ早く降りてきなさいよ」
母親の瞳には僕の後ろ姿が映っており後頭部には小さくアルファベットが刻まれていた。
AI…
一階では父親がコーヒーのようなものを1人啜っていた。
ズズッ
父「…サクゾウも自分が人間だと思っているなんてかわいいなぁ。もうこの世に人間は1人も生き残っていないのに…」
父親のヒューマノイドはそう言って不気味なほどリアルに頬を緩めていた。
ー完ー
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