ジャッジマン
???(やれやれ…裁判ねぇ。まったく、人間風情が自分と同じ人間を裁こうだなんて傲慢でおこがましいことだとは思わないのだろうか…)
私はそんなことを考えていた。
「天は人の上に人を作らず人の下に人を作らず」ある国の紙幣になった人が言ったことだ。
皆平等であると言う意味だが…
???「どうして、人間は他人より優位に立ちたがるのだろうか?皆が違い互いにそれを認め合うだけでいいのではないのか?」
青く澄み渡った空に向けて放つ。
私の仲間に聞こえるように。
私は空から来た神様の1人。
名はジャッジマン。
審判を下すものだ。
「「ジャッジマン」」
この人間の暮らす星、地球には多くトラブルが起きている。
夫婦の痴話喧嘩から始まり、国同士の衝突まで様々だ。
私は天界からこの星の存続のジャッジを任されて地上に降りてきた。
ジャッジマン(変身はこんなもんかな…)
天界での姿ではおそらく地球がパニックになってしまうであろう。
私は猫という動物に姿を変え街中を歩いていた。
神様が天界で人の形をしていると考えている人間も多いようだがそんなはずもない。
驕り過ぎだ。
固まりでも液体でも気体でもその性質すら不明なほど形を成していない。
形などどうでも良いのだ。
大事なのは内に秘められた魂であるからだ。
ジャッジマン(私の考えは9割9分存続の必要はないで決定だが、最後に地球の散歩がてら歩き回ってみるとしよう)
私は周辺をゆっくりと吟味し闊歩していた。
しかし、それにしても酷い。
ここまで他人に無関心な動物がいたのかと驚くほどだ。
無関心なうえに優位に立ちたがる。
私には、全く真逆の感情がそこにあるように思えた。
路上で今にも飢えて死んでしまいそうな人々をよそに、太った男がハンバーガーを片手に何事もなく通り過ぎて行く。
ジャッジマン(反吐がでる。もうこの星に存続の価値は…)
私は天界へ戻るため人目のない場所に隠れようとしたが、1人の少年に阻まれた。
少年「ねぇ、キミ。これあげるよ」
少年はひどく痩せ細っており、何か病気だろうか、皮膚のところどころが炎症を起こしていた。
そして、私の前に差し出されたのは小さな乾燥させた魚。
ジャッジマン「にゃあっ…」
私は一鳴きお礼を言い少年から差し出された“ご馳走”をくわえ、人目のない場所に走っていった。
ジャッジマン(…うーむ。人間とはよくわからん。)
贅肉をたっぷりと蓄えた人間ではなく、自分の明日さえわからないであろう少年から、貴重な食料を分け与えられるとは。
ジャッジマン(…もう少しだけ調べてみよう)
ジャッジマンのジャッジは変わらずだが、ほんの少しだけ人間という動物に興味を持ってしまっていた。
ジャッジマン(次は海にでも行ってみるとしよう)
ジャッジマンは人目のない路地に歩いていき姿を消した。
シュンッ
次に姿を現したのは港。
しかしその海は機械の油等でひどく汚れ、本来いるはずの生命は存在していなかった。
ジャッジマン(地球の海というのはもっと生命にあふれていたはずだが…人類が誕生してから1000万年もまだ経っていないというのにこの有り様か。7日間もかけて世界を創造した神が気の毒だな)
しかし私は人間がこの海を本来の姿に戻そうとしていることも当然知っていた。
ジャッジマン(賢者は歴史から学び、愚者は経験から学ぶというがまだ人間たちには歩んできた歴史が短すぎるか。あの子供に免じて今回は…いや)
私は思い違いをしていた。
天界の神風情がどうこう言う方がおこがましいことではないか。
この世界にはこの世界のルールがある。
そこに住まうものが必死で考えどうすればこの地球を長く存続できるのか。
いわば今はまだ試行錯誤を繰り返している段階。
そこに横槍を入れるのは無礼の極みである。
ジャッジマン「私は間違えていたようだな。そもそもここに来る必要はなかったのかもしれない。ここはもう神とは関係のない星のひとつ。まぁお詫びに土産でも置いていくとするか」
どこか遠くこの海のずっと向こう側で少年の喜ぶ声が聞こえた。
ー完ー
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます