平均とAVERAGE
こんにちは、僕の名前は「
学力もスポーツも顔も身長も体重も良くも悪くも平均値。
この前は全国高校学力テストの平均を取ったしスポーツテストだって全国平均と全く一緒。
何一つ秀でていないし劣ってもいない。
ここまで突出したものがないと本当に毎日がつまらない。
そんな時にある奴と出会ってしまった。
僕と同い年の高校生「
「「平均とAVERAGE」」
今日も学校が終わり、駅に向かって歩いていた。
平(ふぅ、今日も何事もなく終わったな…)
いつも通り同じ時間に起きて、同じ電車に乗り授業を受け同じ時間に下校する。
本当に同じ毎日の繰り返しでつまらない。
そう思うことさえおこがましいのかもしれないが刺激が欲しい。
変化が欲しい。
そんな妄想をしながら、もう少しで駅に着こうとするところで声をかけられた。
???「なぁお前、俺と同じだろ?」
急に声をかけられたので反射的に体をこわばらせてしまった。
声のする方を見ると、自分と似た顔をした高校生がいた。
平「なっ、君は誰だ?」
阿部「俺は阿部礼二っていうんだ。よろしくな平均。」
平「どうして、僕の名前を。」
阿部「このあたりの高校にすべて平均をとる奴がいるって聞いてな。お前のことは大体わかる。身長170.3㎝体重60.8㎏。総務省から出された18歳の男の平均身長と体重だ。偏差値は常に50。何もかもが中央値。まぁ驚くな。俺もお前と同じだ。」
平均は最後の一言で何となくすべてを察した。
俺もお前と同じ…
同じような背丈、体型、顔それだけでこの男が自分と同じなのだと理解できた。
平「君が僕と同じような境遇にいるのはわかったけど、なんの用だい?」
阿部「同じような?くくく、違うぞ。俺とお前は全く同じなんだ。この意味は似ているようで全く違う。そしてこの事実が、俺がお前と会う理由になった。」
平「一体君は何が言いたいんだ?」
阿部「おそらく俺たちは人工的に作られた試験管ベビーってやつだ。なぜそんなことをしているかは知らんが俺たちは多分この先、平均的な年収を稼ぎ、平均的な歳で結婚し、平均寿命で死ぬ。」
平「なっ!」
平(だがこの18年間すべておかしいと思うくらいずっと平均で生きてきた。)
この男が言うことにはなぜか説得力があった。
阿部「なあ、お前!俺と組まねぇか?この先ずっとつまらない毎日を過ごすと考えるとうんざりするんだ。」
僕は即座にこう返した。
平「いや、こういった何気ない日常にこそ幸せがたくさん溢れているんだってことにまず気付いた方がいいよね。だって今何不自由なく過ごせていること自体恵まれているし、そもそもこの日常から抜け出して何がやりたいって具体的な案は持っているの?ないよね?ただ同じ毎日が退屈だって嘆くなら現状を変えずに変化させることはいくらでも可能だよ。そんなこともやらずにやだやだってクソガキみたいに喚いて恵まれた境遇を捨てるのは愚者のやることだと思うよ。それにさっき自分で言ってたけど平均的に稼いで平均的に結婚できるってこんな幸せなことないでしょ。平均的な暮らしを送れない人もこの国にはたくさんいるのに失礼だと思わないの?大体さあ…」
阿部「あの!もういいです…すいませんでした…」
阿部は僕の話を遮りそそくさと帰っていった。
僕は
危ない橋は渡らない!!!
ドンッ!!!
―完―
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