特異体質

ある日、俺は交通事故に遭い意識不明の重体になり生死の境を彷徨っていた。


事故の衝撃で内臓系はぐちゃぐちゃ、しかし臓器提供してくれた人と長時間の手術のおかげでなんとか一命をとりとめることができた。


ところが、長いリハビリ生活を終え退院となった翌日から自分に変な力が発現してしまった。



「「特異体質」」



ーー力が発現して2ヶ月後、満員電車にて


ガタンゴトン


電車に揺られながら俺はぼーっと考え事をしていた。


俺(腹減ったなぁ。“リサイクル”するか)


“リサイクル”とは俺の発現した力の名前だ。


まぁ自分で名付けたのだが。


“リサイクル”と言うのは下品な話、自分が最後に食べたものが排泄物としてそのまま出てくるというものだ。


1番最初は大根が尻の穴から出てきそうになって一度は交通事故で死にかけ、今度は大根で死にそうになった。


不思議なことに大根の切れ端を食べても丸々一本の大根になって出てくるのだ。


初めは不便な体になったと思っていたが、2ヶ月でいろいろと対策ができ快適な毎日になっている。


結局尻の穴には限界があるので、スープ状のものを最後に食べればいいのだ。


そうすれば尻の穴には負担がかからない。


スープ状で主食になるものといえば…


そう、カレーライスである。


俺はカレーライスを食べ、尻からカレーライスを出し、またそれを食べるという無限ループをしている。


食費はかからなくなり生活にも余裕ができる。


同じものばかり食べても苦じゃない性格なので意外と気に入っている。


大体食べ終わって6時間後に便意を催すことにも気付き、ちょうどその頃にはお腹も空くので良いサイクルが出来上がっていた。


カレーライスをトイレに流すのはもったいないので紙皿とスプーンは必ず持ち歩いている。


汚いと思うかもしれないが俺からすれば鍋からカレーをよそうのとなんら変わらない。


まぁヘンテコな力だが結構気に入っている。


アナウンス「次は死離穴名(しりあな)でございます」


アナウンスが駅名を告げた。


俺(おっ次だな。)


しばらくすると駅に着き、電車の扉が開いた。


俺は満員電車の人混みをかき分け電車を降りた。


体を冷やしたのかお腹が痛くなってきたので急いで駅のトイレに向かっていた。


1人分の幅しかない階段を駆け上って女の人を半ば強引に抜かしていく。


その時に軽く肩がぶつかったが特に謝りもせず無言で一礼してトイレに向かう。


階段を上り終わると俺は個室トイレに駆け込んだ。


ブリリリリチチチチチチィィィィ


俺(ふぃぃ。間に合った。じゃあいつものようにいっただきまーす。)


ぱくっ


俺「うぎゃあぁぁぁ!」


その後、数秒遅れて女性の悲鳴が聞こえてきた。


女の人「きゃあぁぁぁあ!」







アナウンサー「本日のニュースです。死離穴名駅のトイレで2人の男女の断末魔が聞こえ気絶していると駅職員から警察に通報がありました。男性の方は自分の排泄物を紙皿に盛り付け手に持っていたそうです。女性の方は肛門から大根が半分ほど出ており、何らかの事件性があるとみて調査を進めています。」



-完-

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