二日酔い
布団とシーツと夢と現実でぐちゃぐちゃになって朝を迎える。錆びた鐘を無理矢理鳴らしているような頭痛のせいで、このままベッドに溶けていきたい。
昨日はどれだけお酒を飲んだのだろう。どうやって帰って来たのかも覚えていない。誰と飲んだのかも、何を話したのかも覚えていない。
おそらく酷い悪態をついていたのではないかと思う。会社の同僚の仕事のできなさ加減とか、美羽のこととか。
「ナギちゃんはお酒に酔うと口が悪くなるから、酔っぱらうのは私と飲んでいるときだけだよ」
いつも美羽にそうたしなめられた。
枕元を手でまさぐり、スマートフォンを探す。なかなか見つからなくて、もう要らないと思ったけど、ベッドのフレームとマットレスの間に手を突っ込むと、小指に硬いものが当たった。
なんとか引っ張り出してみると、スマートフォンではなく、ビー玉のような飾りがついた髪飾りだった。
私と美羽が北海道かどこかに旅行へ行ったときに、お揃いで買ったもので、この最悪な気分の朝に一番見たくないものだった。
私はそれをベッドのフレームとマットレスの間に戻し、見なかったことにする。
スマートフォンをやっとの想いで見つけて時間を見ようとすると、電池が切れていて画面が点かない。
何も、今いるところから進んでいかない。ぬかるみの中から必死に足を引き抜き、進もうとして、反対の足が今度は抜けなくなる。
そして腐ってハエがたかっていく。
進むために捨てることも、乗り越えることも、持っていくことも、私にはできない。
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