第6話 いつまでも、これからも

まやが去ってから、半年が経とうとしている。

まやの事は、今となっては、夢のような気がする・・・


組織の老紳士が言ってた。

「セラピーロボットは、役目を終えると、記憶をリセットされて、

別のところに運ばれる」と・・・


まやはもう、まやでは無くなった・・・

新しいクライアントの所で、幸せになっているのだろうか・・・


でも、俺は全く変わっていない・・・

ていうか、まやが来る前に戻ってしまった・・・


「・・・まや・・・俺・・・やはり君がいないとだめだよ・・・」

俺は、完全に抜け殻となっていた・・・


これでは何のために、選ばれたのか分からない・・・


まやの自室は、すっかりきれいになっているが、その後は入っていない。

「掃除しておこうか・・・な・・・」

そう思い腰を上げた・・・


そこへ・・・


ピンポーン


ベルが鳴った・・・


玄関のドアを開けた。

すると・・・


「塁くん、久しぶりだね。元気だった?」

「ま・・・まや・・・」

「そうよ、塁くん。驚いた・・・」

「驚いたも・・・何も・・・」


そこへあの老紳士が現れた・・・

「驚かせてすみません」

「驚いたも何も・・・」

頭がこんがらがる。


「実はですね・・・」

「はい」

「あの後、004号のプログラムを調べました」

「はい」

「すると、004号は、あなた様に、本気で想いを寄せているようです」

「えっ」

俺は驚いた・・・


「いかがでしょう・・・004号、いえ、まやを置いてやってくれませんか?」

俺は茫然とした・・・二度と会えないと思っていたまやが来てくれた。

そして、いつまでも一緒に生活していいという・・・

嬉しくないはずがない・・・


でも・・・


「いかがなされました?」

「本当に、あの時のまやなんですか?」

「もちろんでございます」

「でも、口調が・・・タメ口に・・・」

「それはですね・・・」

その時、まやが口をはさんだ・・・


「後は、私が話すね」

「まや・・・」

「私と君との1年間の生活が記録されているのは知ってるね」

「うん」

「その結果ね、君のようなタイプは、タメ口で親しく話した方が効果が出るの」

「効果?」

「君との一年間の生活は、全て覚えてるよ」

老紳士は、頷いた・・・


「だから、これから私と君とは・・・」

「何?」

「女の子から、言わせる気?」

わかったよ・・・まや・・・


ふたりは・・・恋人となった・・・

そして・・・


数年後に、挙式を挙げた。

森の小さな教会だ・・・


もちろん、まやはセラピーロボット・・・正式な夫婦にななれない・・・

でも、けじめとして、形だけでもしておきたかった・・・


「まや君に会えてよかった」

「私もだよ・・・塁くん・・・いや、夫婦だから塁かな・・・」

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いつかふたりで 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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