第5話 セラピーロボット

あれから一年。

つまり、まやが家に来てから1年が経った・・・


もう、まやとの生活にもすっかり慣れた。

これが当たり前だと思っていた・・・


だが、日に日に近づいてくる恐怖に怯えていた・・・


「塁さん」

「・・・」

「塁さん」

「・・・えっ・・」

「どうかしたんですか?ぼんやりして・・・」

「・・・塁さん?・・・」

「あっ・・・ごめん・・・でも、まや・・・」

「何ですか?塁さん」

しばらく間を置く・・・


「君も、分かっているんだろう・・・」

「・・・はい・・・」

その日は、空気がしんみりしていた・・・

険悪ではなく、すぐに訪れる・・・出来事に・・・


ピンポーン

玄関のベルが鳴った・・・


「ついに来たか」

そこには、老紳士が立っていた。


「セラピーロボ・004号を引き取りにまいりました」

「・・・わかりました・・・まや・・・」

「まやと名付けられたのですか?」

「ええ」

老紳士は、微笑む。


「お邪魔させていただいても、よろしですか?」

「どうぞ、何のおかまいも出来ませんが・・・」


まやは自室にいたようだ。

「こちらが、004号のお部屋なんですね。」

「はい」

「中は一度も開けていませんか?」

「もちろんです」

「御協力感謝します」

老紳士が中を開ける。


そこにはカプセルがあった。

まやはこの中で、休んでたのか・・・


「塁さん・・・」

「まや・・・」

「私、塁さんと離れたくないです。一緒にいたいです。」

「まや・・・僕もだよ・・・でも・・・」


まやは、人間ではない・・・セラピーロボット。

ある組織によって、開発された・・・

精神が病んでいる人に、ランダムで選んで、派遣される。

そのモニターに、俺が選ばれた。


それまでの、俺は精神が病んでいた・・・

生きる希望を失っていた。


そこへ、まやが来てくれた。


「まや・・・わかってくれる・・・ね・・・」

「はい」

「正直、まやがいないと寂しい。でも・・・」

「でも?」

「このままでは、俺は・・・」

「言わなくてもわかります。塁さん・・・」

「この一年で、塁さんの事はわかりました」

「まや・・・」

「私、塁さんの事が、大好きです。なので・・・」

それ以上の会話はなかった・・・

でも、心は伝わった・・・


そして、まやは老紳士に連れられて、・・・家を去った・・・


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