第2話 めんつゆポテンシャル
米以外の食べ物がない。
正確に言えばチンジャオロースの元とかホイコーローの元とか、「~の元」はあるのだが、どれもこれも肉を使うものばかりで、生憎今ここに肉はない。
時刻は夜中の12時半、スーパーはどこも閉まっている。
運よく漬物が入っていますように、と意味の分からない祈りを奉げて開けた冷蔵庫にあるものが入っていた。
めんつゆである。
きたこれ、もう私の勝ちだ。
余っていた人参、余っていた玉ねぎ、チンジャオロースで使ってやろうと思っていた千切りたけのこの水煮。
鍋にめんつゆを注ぐ。火にかけて水で薄める。
水煮の水を切って鍋に入れる。人参と玉ねぎを適当にざくざく切る。ざくざく。
食べるのは私一人だ、私が食べられる大きさなら何でもいい。
切ったそれを600W(かどうかはわからない、私の家の電子レンジはHighかLowの2種類しかない)で2分温めて柔らかくする。
鍋に入れてしばらく放置。
物足りない。米と汁物だけだと、何か物寂しい。
冷蔵庫の奥に何かが隠れている。
「えっ、いつ買った豆腐…?期限明日までじゃん、あぶな、見つけてよかった…」
豆腐を皿にあけて醤油を垂らす。
以前何かに使いたくて買ったチューブのショウガを添える。
ネギがあったら完璧なんだけど、まあいいや。
さて、即席めんつゆスープも完成だ。
食べようと箸を手に取ったところで、携帯が震えた。
「明日清華の家泊ってもいい?バイトで終電乗れなさそう」
いいよ、と返信しながら考える。
ハルちゃんの好物は蕎麦、目の前にはめんつゆスープ。
人参も玉ねぎもたけのこもちゃんと味が染みていてとてもおいしい。
めんつゆの濃さもちょうどいい。
これを蕎麦で食べないなんてもったいない!
明日になれば野菜たちにももっと味が染みるはず。
彼女からの返信が来る前にもう1文付け足して送信する。
「夕飯、楽しみにしててね」
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