おいしいごはんがたべたいの
夏冬春秋
第1話 大根祭り
先週、実家から釜揚げのしらすが送られてきたので、これは、と思い大根とおろし器を買った。
しらす丼は非常においしかったのだが、
「使い道がなぁ…」
大根が大きすぎたのだ。
一人暮らしで夕飯しか食べない系女子大生に、大根1本は多すぎた。
とはいえ使いかけの大根の貰い手なんかもちろんいないし、早く使わないと傷んでしまう。
「3分の2くらいは残ってる…仕方ない、またおろすか」
5㎝くらいの大きさに切って皮をむいた大根をおろす。
納豆を取り出そうと冷蔵庫を開けた時点で、米を炊いていなかったことを奇跡的に思い出す。
危ない、主食のない夕飯は夕飯として認められない。
ましてや納豆を米抜きで食べるなんて言語道断。
炊飯器に米をセットして「高速炊飯」のボタンを押す。
おろしきった大根から出た水分をある程度切って、スープカップに開ける。
次は少し大きめに切る。
よし、これで残りは5㎝くらい。あとはしっぽなので落としてしまう。
鍋に水を入れて、3㎝くらいの長さのスティック状に切る。
全部切り終わったら鍋に入れて火にかけて、大根の色が変わってきたらだし粉を投入。
しばらく放置。
「ふむ…余ったコレ、どうしよう。変に残しておいてもなぁ…」
なんとなく皮をむいて、光が透けるくらいの薄切りにしてみる。
なんとなく長方形の皿に丁寧に並べて、なんとなくわさび醤油をかけてみる。
「え?旨そうじゃね?」
大根の…刺身だ…。
鍋に入れた大根はもうずいぶん透明になっていて、慌てて味噌と豆腐を入れる。
本当は味噌汁の具に大根と豆腐っていう組み合わせはあまりよくないらしいけれど。
とにかく大根を消費したかったので、今回は仕方がない。
茶碗に炊き立てご飯を盛って、味噌汁をお椀に。
おろしの入ったスープカップに納豆を入れて混ぜる。おいしいんだな、コレが。
最後に大根の刺身。
「思ったよりまともなごはんになるんだな…」
味噌汁の大根はほくほくだし、納豆とおろしとの相性も抜群。
わさび醤油をかけた薄切り大根も、大根の辛さとわさびの辛さがちょうどよくて。
次の日に腹を壊すことになろうとは、1㎜も思わなかった。
何しろおいしかったのだ。
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