告白2 =愛人体質=

神原 遊

第1話 情事の後

 その後私達は、ベッドに倒れ込みました。須藤は私に軽くキスをしました。私は尽き果ててしまって何も考えられず、すぐに眠りこんでしまいました。


 次に目を覚ました時、おそらく真夜中だったと思います。ベッドに須藤の姿はなく、私はひとりでした。


 まさか、と思いました。私はあんな、淫らな夢まで見るようになってしまったのかと頭をよぎりました。まだどうしようもなく眠くて、再び眠りにつきました。


 もう一度目を覚ました時。カーテンの隙間から入る光によって目に映る部屋は、自宅のそれとは明らかに違っていました。余計な物などない、整えられた空間。


 心地よく目覚めたその時、私は何も身に着けてはいませんでした。ですが体中に、須藤の口づけのあとが残されていました。胸元に、腕に、肩の後ろに、太腿の内側に、薄紅色のそれらが刻みこまれていました。


 昨夜のことは、もちろん夢などではありませんでした。私がいたのはホテルの一室。ひとりきりの部屋。


 誰もいなかったのに、掛け布団に添えられたシーツを引いて体を隠しました。裸のまま眠り込んでしまったことがはしたなく思えました。


 須藤はあの後、帰ったのでしょう。ことの直後だったのか、夜中だったのかもわかりませんでした。


 彼と関係するとはこういう事なのだ、と思いました。愛している、とあの人は私に言いました。なのにそう伝えた相手を置き去りに、自分の家庭へ帰ってゆく。ほんのかすかにでも、彼の言葉に心をしめつけられた自分の滑稽こっけいさに苦笑いしました。


 須藤を責める気持ちはありませんでした。最初の時とは違って、私自身も受け入れた事でした。自分も望んだことだとわかっていました。そして前夜のことを思い出し、そのはじまりの瞬間から克明こくめいに思い返し、身体は淫らなうずきをおぼえていました。


 私はそろそろと自分の身体に触れました。昨夜の須藤との時間を思い起こしながら、彼の指や唇のまさぐったところに指を這わせました。ささやかな動きでは満足せず、次第に大胆に指を動かしました。


 あの人のように上手くできない、と思いました。自分の身体に触れるのは嫌いではありませんでした。元夫である貴之のもとを去ってからは、自分以外の誰にも触れさせるつもりはありませんでした。


 ですがもはや、私のつたない指先のみでは身体は満足してはくれませんでした。もっと圧倒的なものを知ってしまったわけですから。


 前日の出来事を思い返しながら、もっとも感じやすい部分へ手を伸ばしました。自分で触れていても月並みでしかありませんでした。昨夜知ったのは狂いそうなほどの感覚でした。内側から粘ついた体液のにじむその部分へ指を滑らせながら、あの人にして欲しい、と願っていました。

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