第2話『アメリカ』

 よっ。あたし、アメリカ!

 世界最大最強の超大国様だ。

 ……ロシアだあ? あんなの、『ソビエト荘』があった頃にあたしがカチコミかけてりゃ、『ソビエト荘』ごと吹っ飛ばしてたね。

「あ、アメリカさーん!」

 あいつはあたしの嫁。日本だ。昔、ちーっとケンカしたが、今じゃあすっかり大人しくなって、あたしの後ろを追っかけるようになった。

『良妻賢母』ってやつか? まあ、日本はマジで大和撫子ってやつだから、あたしも惚れたんだろうけどな。

「アメリカさん、私の顔に、何か?」

「いや? 今日も日本は可愛いなあって。あたしも良い女に巡り会えたよ」

「そんな……私なんかが……」

 そういうとこだぞ日本。Japanese KENSONは結構だけど、それは何より私に効く。

「……日本、今日お前の部屋で、晩酌がしたいな。日本酒……は無理だけど、ウイスキーがあったら出しててくれない?」

「ウイスキーですか。あるかは分かりませんが、探してみますね」

「酒の肴に、『活け造り』ってのを食べたいんだけど」

 ちょっと無茶な頼みだったか? さすがの日本でも……。

「活け造りですか! 鮎で良いなら」

「良いね。楽しみにしてるよ。……できれば、二人で飲みたいな」

 なんか、ロマンチックにいきたい……って、あたしの柄じゃないか。わはは。

「私と貴女の仲ですもの。何でも仰ってくださいな」

「おっ、やっぱり日本、あたしの事好きなの?」

「いえ、親友ですから、出来る限り手助けしたいなと」

 そういう事かよ。まあ、可愛いから許す。

「……なあ、日本。ふと思ったんだけど、こうして酒を飲むって、昔のあたしらからしたら、あり得なくないか?」

 日本、昔はあたしも手こずるくらい強かったし。

「あの頃は、私も世界を知らなすぎました。未熟者でしたので。……アメリカさんと戦うときも、私の不手際で、あんなことに……」

 真珠湾の事か。ありゃあ確かにびっくりしたけど……。

「まあ、お前なりにやったんだろ? 最後は人乗っけたまま突っ込みやがって。正直トラウマだからな?」

「私がボロボロになったときに、色々助けてくださったのが、貴女なんです。感謝しても、しきれませんよ」

「よせやい。照れくさいな。まあ、マジで殺しあってるときは、顔がよく見えなかったけど、よーく見たらとびきり美人だったからな」

 あたしが殺ろうとした相手が、あんなに美人だとは思わなかったよ。

「ボロ布着た女が、今じゃ立派な着物着てなあ。高級そうだから、またボロボロにするのは止しとくよ」

 何十万もするのを払うくらいなら、このまま手出ししないのが良いだろうしな。

「じゃあな日本。夜にまた行くわ」

「ええ。お待ちしてます」

 やっべ。今のは反則だわ。鼻血噴くとこだった。あぶねー……!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る