世界対談 ~擬人化計画~
神楽旭
第1話『世界荘』
私、日本と申します。
私は『世界荘』というアパートに住んでいます。
私の部屋の近くには、ロシアさんや中国さん、それに韓国さんが住んでいるんです。
ですが……。
「ねえ日本、その
「だ、ダメです! 私がご先祖様から受け継いできた、大事な物なのですから……」
「……ふーん。じゃ、くれるまで聞くから」
中国さんはしつこいですし、
「経済交流はしてあげるけど、うちの
「そのようなつもりでは……」
ロシアさんは怖くて、
「日本やあ、助けておくれよ。赤い服着た双子がな、ロケット花火飛ばすって脅してくるのよう……」
韓国さん……それはご自分で解決出来ませんか……?
……とまあ、かなり個性的な人達なんです。
私だって、昔はかなり強かったんですよ? ……まあ、『強さ』と『恐怖』を取り違えたときもありましたけど。
「おん? おーあたしの嫁。今日も可愛いな」
「アメリカさん……嫁ではありませんよ?」
この方はアメリカさん。ある時期から、私の代わりに戦ってくれるようになりました。
「つれないこと言うなよ。もう七十年以上の仲だろ?」
「それはそうですが……」
そう言ってタバコを吸い出すアメリカさん。
あの、タバコなら外で……。
「ん? あっ! アメリカ!」
「おう中国。金の話か?」
「あなた、関税かけすぎなのよ! 高くて払えたもんじゃない!」
アメリカさんと中国さんは、お金の話で仲が悪いみたいです。
「全体的にピンチなんだよあたしは。財力持ち始めたお前には分かんないだろうけど」
「ふん。『世界荘』のてっぺんに住んでるくせに」
なんだか怖い雰囲気です……。
「あーあ、やだやだ。お前と話すと、金ばっかりだ。つまんねー」
「あたしもよ。あなたに話しかけたのが間違いだったわ!」
皆さん、仲良くしましょうよ……。
「なあ日本。あたしこないだ町に出て、新しいカフェ見っけたんだ。一緒に行かないか?」
「ええ。私で良いなら、是非」
「さっすがあたしの嫁! いや、天使か?」
「大げさですよ……」
アメリカさんらしいと言えばそうなんですが、ちょっと誇張気味では無いでしょうか?
「あら、アメリカさん、日本さん。ここの
「わたくし達と、お茶しませんこと?」
フランスさんとイギリスさん。二人とも、とても良いお方です。
「よっ、フランス。また食べ歩きか?」
「『食べ歩き』なんて低俗なものではありませんよ。『究極の美食』を追求しているのです」
フランスさんは、料理に詳しく、『世界中の食通の必読書』と呼ばれる本も書いたんだそうです。
「そうだ日本さん。私、あなたの料理にとても興味があるのだけれど、食べさせて頂けません?」
「それも、『究極の美食』なのですか?」
彼女のお口に合うか、分かりませんが……。
「ええ。何も、ナイフやフォークを使って食べる料理だけが、美食という訳ではありませんから」
フランスさんには、懐石料理をご馳走しましょうか……。
「なあフランス。あたしんとこのハンバーガーも美味いぞ?」
「ジャンクフードは頂けませんよ」
「わたくしで良ければご馳走致しますわよ?」
「イギリスさん。あなたは論外よ。あなた、何でもかんでも濃い味付けなんだもの」
「言ってくれますわね。だから昔から好かないのです」
「あの、皆さん落ち着いて」
「そうだぜ。あたしの日本が困ってるだろ」
アメリカさん……。
「そうだ日本さん。あなたも、私と一緒に、『究極の美食』を追い求めてみません?」
「私は……遠慮しておきます」
「何故? あなたの和食と組み合わせて、新しい美食が生まれるかもしれないというのに」
「あ、えーっと、フランスさん。申し訳ないのですが、また今度に……」
「あら、そう? 私はいつでも歓迎しますからね?」
「はい。あはは……」
私は豪華で美味しい料理より、素朴で多少味にムラのある料理が好きなんです。
「あ、ロシアさん」
「日本……はぁ。アメリカもいるのね……」
「おい。なんだ今の反応」
「ただ頭に痛みを覚えただけよ。昔の敵国を見て、鬱陶しいとか思ってないから」
ロシアさん、本音が駄々漏れです。
「
「あなた、うちの
「こわいねえ。ロシアさんはクールビューティってか、冷血シベリア女じゃんか」
あ、アメリカさん。挑発もほどほどにした方が……。
「……
「あーもう。気分悪いな。日本、連れまわして悪いけど、帰るぞ」
「はっ、はい」
アメリカさんもロシアさんも、皆仲良く出来れば良いのですが……。
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