第十話「家庭」

一年後。

「しばらく休暇をとってもいいですか?」

「どうしたの?」

看護長が聞いてきた。

「赤ちゃんができました」

「あら、そう。何ヶ月?」

「5ヶ月です」

あれから半年が経った頃、加藤と飯田は結婚をした。その一年後に拓哉が生まれた。

「そう…。また休んだら、給料が少しだけ安くなるよ?」

「大丈夫です。加藤先生がいますから」

「そうだね」

「では失礼します」

香織が看護長の部屋から去った後、直人と合流をした。

「どうだ?」

「大丈夫です。休んでもらえます」

「そうか。二人目も慎重に育てないとな」

「そうですね」

「では行こうか」

「はい!」

香織は直人の後をついて行った。


「加藤先生、飯田さん、おめでとうございます!」

舞美と藤田にお祝いされた。

「二人ともありがとう」

「今度も休みますか?なら、ちょっと残念です」

「そうですね。でも、休暇を取ったらまた戻ってきますから!」

「分かりました、待ってますね!」

直人と藤田は舞美と香織のやり取りを見つめていた。

(二人は本当に仲がいいな。そんな二人の幸せを守りたい)

直人と藤田はそう思いながら微笑んだ。

「佐藤さん、退院おめでとうございます!」

「加藤先生、飯田さん、今までお世話になりました」

佐藤さんは軽くお辞儀をした。

「加藤先生と飯田さんのサポートがなければ、私は退院できなかったでしょう」

「本当にありがとうございました。お二人の幸せを祈っています」

「良かったな!」

「うん、そうだね!」

「あの…飯田さん、話したいことがあります」

「いいですよ」

麗子は元々直人にその気はなく、からかっていたと香織に伝えた。二人の愛は本物か偽物か確かめたかっただけだと主張をしていた。


「パパー」

「なんだ?拓哉」

「僕、将来お医者さんになる!」

(そうか。子供にも影響を与えるんだな…)

「本当?じゃあ、お勉強頑張らないとね!」

「うん!僕、頑張る!」

拓哉のキラキラした目を見つめ、加藤と飯田は嬉しそうに笑いあった。

そして二年後。

「ママ、寂しい」

ポフッと愛奈は飯田の体に包み込んだ。

「そう。パパ呼んでくるね」

「直人、ちょっと来て?」

「うん」

「愛奈、どうしたんだ?」

「パパとママがいない時、寂しいの」

「あら、そうなの?ごめんね」

「たまに君たちといる時間を長くするよ」

直人は香織と愛奈と拓哉を一斉に抱きついた。

(最初はこうなると思ってもいなかったな。まさか…こうして家庭を築きあげることができるとは)

(香織…。君のおかげで、俺は誰よりも優しくなれた)

「ありがとな」

少し俯きながら、直人は香織の頬に触れ、そっと優しくキスをした。


〜終わり〜

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