第九話「祝福」

(このままうまく行くと思ったのに…)

「うん、そうだね」

直人は香織と電話で話し合っていた。

『だから手術受けても、良くなる可能性はあまり高くないかもな』

「そうだよね…。でも前よりは治るかもしれないでしょ?」

『ああ、そうだ』

「とにかく、今はそうしよう?」

『そうだな』

「仕事の話しはここまで。直人、今一人暮らし?」

『うん、そうだよ』

「家族は?」 

『群馬県の実家だ。医者になった時から、一人暮らしを始めたんだ』

「へえー、大変そう…」 

『そうか?慣れれば問題ない』

『香織は…俺と二人暮らししたいって思う?』

「うん、思うよ」

『じゃあ、結婚したら始めようか』

「うん、ありがとう」

『どういたしまして』

(二人暮らし。楽しみ!)

「直人、今何してる?」

『明日の会議の準備をしてる最中だ』

「そう。進んでる?」

『うん、おかげ様で』

直人は少し笑いながら言った。

「良かった…。一緒に頑張ろうね」

『うん、じゃあそろそろ切るな』

「うん、また明日」

二人は電話を切り、明日の会議に向けて準備をし続けた。


翌朝、直人たちは会議室で、佐藤さんのことで相談をしていた。

「そうすると、佐藤さんに負担をかけるから、別の方法で何とかなんないのか?」

「その点なら、大丈夫ですよ」

直人は院長の川越にある資料を見せた。

「なるほど。なら大丈夫だな」

「メスする担当は誰になったんだ?」

「藤田先生です」

「そうか。なら安心できるな」

院長の川越は安心した。

「院長、飯田さんはどうしますか?」

「隣で手伝いをしてくれ」

「分かりました」

「加藤も藤田の手伝いをしてくれ」

「手術日は11月29日だ。みんな、しっかりと準備をしてくれ」

「はい!」

みんな同時に返事をした。

「良かった、うまくいったな!」

「これで佐藤さんも安心したでしょうね」

「そうですね」

「これからどうするんですか?」

「加藤先生と食事をします。あっ藤田先生も良かったら、一緒に食事しませんか?」

「いいんですか?ありがとうございます」

直人と香織と藤田は病院の近くにあるレストランで食事をした。

「おいしいですね」

「そうですね」

「光輝は彼女いないのか?あまり話したことないよな?」

「いるよ。舞美って言う子」

「私の親友なんです!いつも仲良くしてもらってます」

「一目惚れなんだ。彼女の性格に惚れたんだ」

「へえーそうですか。いいですね」

「今さら言うのもあれなんだが…結婚しようと考えてるんだ」

「え?じゃあプロポーズするのか?」 

「ああ…クリスマスの日にしようと思って」

「頑張ってくださいね!応援していますから!」

「頑張れよ!」

「二人ともありがとう」

三人は楽しく会話をした。その日は誰にとっても良い宝物となった。



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