第八話「邪魔者」

「加藤先生、浜崎さんの治療についてですが…」

「ああっそうだったな。治療を受ければ、一時期悪化しないさ」

「そうですか。だといいんですけど...」

「どうしたんだ?」

「実は…浜崎さんにお願いをされたんです。『もし、私の命が亡くなったら、子供に教えないでほしい』と」

「そうか。それはどちらも辛いな」

浜崎さんの子供はまだ15才。そんな幼い子供に深い傷を与えるわけにはいかないと香織は考えた。

「でも、だからって…」

「加藤先生!あの…少しいいですか?」

「ちょっと待っててくれ」

「飯田、続きを話してくれ」

「だからって教えないわけにはいきませんよね?」

「そうだな。患者の意思を第一に考えるのは俺達の仕事だが、この場合はもう一度、患者と話し合ったほうがいいな」

「そうですよね」

「後で浜崎さんのレントゲン写真を見せてくれ」

「分かりました」


(確実に治るとしたら、手術するしか手段はないな…)

直人は浜崎さんのレントゲン写真を見ながらこう思った。

「…飯田、浜崎さんに手術受けたいかどうか聞いてくれ」

「分かりました」


「浜崎さん」

「はい、どうかしましたか?」

「手術受けたいですか?」

「ええ…ですが、費用が高いですよね?」

「そんなにかかりませんよ」

「そうですか。なら受けます」

「分かりました。加藤先生にお伝えしますね」

「お願いします」


「加藤先生、浜崎さんが手術受けたいとおっしゃっていました」

「そうか、分かった。後ほど、手術日を伝えておくよ」

香織は直人のいる部屋から離れた。

「飯田さん」

「はい」

「加藤先生とさっきまで一緒にいたんですか?」

「そうです」

「そうなんですね。私諦めませんから」

「え?」

「あなたの傍から加藤先生を奪いますね」

清水はニコリと微笑みながらそう言った。

(本気なんだ。だからといって負けるわけにはいかない!)

「そう…うまくいかないと思いますよ、清水さん」

「そうですか?どうでしょうね」

「ではお先に失礼します」

麗子は直人に挨拶した後、その場から離れていった。













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