第七話「ときめき」

「加藤、清水さんの担当してくれるか?しばらく、飯田さんは藤田先生のお手伝いをするから」

院長の川越が直人に言った。

「はい、もちろんです」

「では、よろしくな」

「はい、分かりました」

「飯田、藤田先生の手伝いをしばらくしてくれ」

「分かりました」

(しばらく傍にいれないのが、ちょっと嫌だな。でも、頑張らないと!)

「飯田さん、一緒に勤務してくれる?」

「はい、分かりました」

直人は香織とが一緒に歩いて行くのを見つめていた。


藤田は加藤の親友だ。クールで優しい加藤と違って、明るくてちょっと意地悪な性格だ。

「飯田さんって加藤先生と仲いいよね。恋人同士だって耳にしたんだけど、本当なの?」

「はい、そうです」

「へえー、なんかいいね。みんな、二人のこと見てると、心がほのぼのしてくるんだ」

「どうしてですか?」

「雰囲気かな…。なんかそんな感じさせるんだ」

(そう言われると、嬉しいかも…)

「あら?加藤先生は一緒じゃないの?」

患者の浜崎さんが、少し驚いた顔をしながら聞いていた。

「はい、加藤先生はしばらく清水さんの担当医になりました」

「そっか。それは残念。二人のこと見てるとホッとするんだよね」

(患者にもそう思われてたんだ。加藤先生との仲が認められたみたいで、嬉しくて加藤先生にこのこと伝えたいな)

優しく微笑む香織の顔を見た藤田は、そのことを直人に伝えた。

「そうか。それは嬉しいな。わざわざ教えてくれてありがとな」

「直人。飯田さんとの時間、大切にしてやれよ」

「ああ、もちろんだ」


「加藤先生って飯田さんのどこを好きになったんですか?」

「仕事に対する真面目さ、そして優しさが好きなんだ」

「そうですか」

「仕事、進めるぞ」

「はい!」

(とりあえず分かったのは、加藤先生と飯田さんは職場で知り合って、お互い両思いだと知らずに、一年間仕事仲間になって、最近告白して付き合い始めたこと)

(まあ、そううまくいかないように、邪魔しないと!)

「清水」

「ここまで大丈夫か?」

「あっはい。問題ありません」

「そうか。なら…」

ポンと加藤は清水の頭を軽く撫でた。

「これからも頑張ってくれよ」

「はい、分かりました」

(初めてこうしてくれたかも…)

麗子は心の中でそう思いながら、直人を見つめていた。






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