第四話「変化」

直人と香織がデートした所を目撃した医療関係者がおり、それが病院中に広がっていた。

「香織ー!加藤先生とデートしたんだって?」

同僚で親友の舞美が聞いてきた。

「うん」

「で?どうだったの?」

「楽しかったよ。少し緊張したけど…」

「へえー」

「良かったね。香織」

「うん」

あれから直人と香織は少しずつ仲良くなるようになった。


「飯田」

「はい」

「落とし物だ」

直人が香織に渡したのは小さなチラシだ。中には直人の電話番号が書いてあった。

(加藤先生の電話番号だ。でもなんで?)

「いつでもかけていいぞ。何かあったら言ってくれ」

「はい、ありがとうございます」

(嬉しいな。加藤先生とこうしてできるのが…)

「加藤先生も何かあったら言ってくださいね!できる限り協力しますから!」

「ありがとな、飯田」

(素直で優しいな。そんな君の傍にいたい)

「加藤先生…あの今度一緒に行きたい所があるんです」

「別に構わないが…」


(ここは…まさか…?)

「お父さん、お母さん会いに来たよ」

「最近ね、加藤先生と仲良くなれたの」

(まさかの…墓参り。飯田の両親はもう亡くなっているのか…。だとしたら、強いな。いつも笑顔でみんなと接している君は…)


「飯田…」

「はい、なんですか?」

「君は…寂しいだろ?いつも一人で。家に帰っても誰かが帰りを待っていない。でも、それでも強く生きている君に尊敬しているよ」

「尊敬だなんて…。私のほうこそ、加藤先生に尊敬しています。いつも患者のことを第一に考え、患者のために努力するお医者は加藤先生しかいないと思います。確かに、一人は寂しいですが、加藤先生と患者に囲まれる毎日があるから、楽しいです」

「そうか…それは良かった」

(君の笑顔が…俺の努力の源だ)

「加藤先生…少しずつ私について話していきますね」

香織は少しだけ悲しそうに直人を見つめた。

「私の両親は、私が10歳の頃に病気で亡くなりました。その後、私は親戚に引き取られ、看護婦になるまでバイトをしながら、恩返しをしました」

「そうか。それは…大変だったんだろうな」

「少しだけです。看護婦になり、初めて好きな人ができました。その人は誰かは教えませんが、唯一確信できるのは、彼はとても心優しい人です」

「そうか。その人とは仲良くなれたか?」

「はい、少しずつですが…」

「加藤先生はどうですか?」

「俺も君と同じ状態だ」

加藤は嬉しそうに言った。

「では、行こうか」

「はい!」

(いつか…こうして君と手を繋いで歩きたい)

直人は香織の横顔を見ながら密かにそう思った。

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