第2話
驚いた私は長男を身籠る姉に連絡をした。陣痛が始まって搬送されたから、電話に出るかはわからない。
プププ、プルルル。するとすぐに「はいもしもし」
声に違和感を覚えた。男声特有の喉仏が邪魔をして少年時に保持してた高みへ昇る美を奪われ地を這いつくばり鼠にすら同情されそうな、小汚ない声だった。
「高松さん、ですか。姉は」
「ああ、弥紅なら1時間くらい前に分娩室に入ったきり」
高松さんの声は、心配性な義理の弟を憐れむような慈しみのような音色であった。そんな男性に対し「預かっていた娘さんの形態が様変わりしました。蔦が生えて脳が飛び出しています」なんて言えるはずがない。
「姉は無事なんですか」
「椎菜のときなんか陣痛と分娩で5時間はかかったんだし、スムーズに行ってる方なんじゃないかな」
「あ、安心しました」
電話を切るが、姪の手足が蛸のようにブヨンブヨンしはじめたが、その他の変化は見られない。砂場の立ち入り禁止とは、このような事態になることを予め知っていた自治体の警告だったのではないだろうか。
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