その2~レイナス~
その2(1)
食料を調達したレイナスは、カミルの待つ廃墟へと急いだ。辺りは夕暮れで、景色が赤く染まっていた。急がないと日が落ちてしまう。
廃墟に小走りで向かっていたレイナスは、ふと足を止めた。廃墟から、男たちが数人出てきたのが見えたからだ。男たちは皆手に武器を持っている。その、ものものしい雰囲気に、レイナスの胸に不安がよぎった。
レイナスは廃墟に走って行った。やがて男たちが、レイナスに気付いた。レイナスを見る男たちの目には明らかに敵意が浮かんでいる。その様子に、レイナスの嫌な予感は益々深まった。
「あなたたちは、一体なんですか?」
レイナスは男たちに尋ねた。
男たちはレイナスを睨み付けてくる。
「おまえたちは魔物だろう?」
その問いかけに、レイナスは息を呑んだ。
「違います!」
しかし、男たちは一斉にレイナスに向かって武器を構えた。
「僕たちは、この村の人たちに危害を加える気はありません! それより、カミルは中ですか?」
レイナスは中に入ろうとしたが、男たちが武器を振り上げてくる。レイナスはそんな男たちの攻撃を必死にかわし、振り払いながら廃墟の中に足を踏み入れた。
そしてそこで信じられないものを見た。
「カミル!」
レイナスは叫んだ。
部屋の奥にカミルが倒れていた。カミルは頭から血を流している。レイナスはカミルに駆け寄り、その体を抱き起こした。
「カミル! カミル!」
何度呼んでもゆすっても、カミルは反応しない。恐る恐る口元に手をやると、カミルはすでに息をしていなかった。
《カミルが死んだ? カミルが殺された?》
レイナスは目の前が真っ暗になり、頭を思い切り殴られたような衝撃を覚えた。
そんなレイナスの背後にカミルを殺めた男たちが近づいて来た。レイナスは、その男たちを振り返り睨んだ。一気に頭に血がのぼり、何も考えられなくなる。
「よくも……」
レイナスは一番近くにいた男に向かって手をかざし、呪文を唱えると、その男を思い切り吹き飛ばした。
武器を構えてレイナスに近づいて来ていた他の男たちが、それを見て顔色を変えた。
「化け物!」
男たちは口々にそう言って逃げ出そうとした。
レイナスは「待て!」と言って呪文を唱え、廃墟のドアに術を掛けた。男たちがドアを開けようと必死に押したり引いたりするが、びくともしない。
「おまえたち、全員殺す」
レイナスが言うと、その場にいた男たちが武器を捨ててレイナスに跪いてきた。
「助けてくれ!」
「許すか!」
レイナスが、一人に向かって指を向け呪文を唱えると、その男が口から血を吐いて倒れた。それを見た他の男たちは、益々怯えた様子で、レイナスに頭を下げた。
「助けてくれ!」
「俺たちは、言うことを聞いただけなんだ」
これは、誰かの命令だったのか? レイナスは、男に歩み寄った。
「誰の言うことを聞いた?」
「預言者です。この村には預言者がいて、もうじき魔物が来るって。来たら殺せって」
「なんで僕たちが魔物だと思ったんだ?」
「魔物は少年の姿をしていて、二人組だと、そう言っていたから……」
その預言者は確実にレイナスとカミルのことを指して預言していたようだ。
「その預言者はどこにいる?」
「ちょうどここと反対側の村の端にある家です」
「どんな奴だ?」
「四十歳ぐらいの男です」
レイナスは思い当たった。この廃墟を教えてくれた中年の男。あの男なのではないか。
「そうか。わかった」
レイナスはそう言うと、呪文を唱えた。すると、空気が刃となり、男たちを襲った。その場にいた男たちは全員、悲鳴を挙げて倒れた。
レイナスは、廃墟を出ると村を突っ切り、反対側の一番端にある家に辿り着いた。ドアを開けて中に入ったが、中には誰もいない。
《逃げたのか?》
レイナスは思ったが、そのままそこで待つことにした。しばらくすると、外からドアが開き、ロープを来た中年の男が入ってきた。それはやはり、レイナスとカミルにあの廃墟を教えてくれた男だった。男は、レイナスの姿に気づくと「あ!」と言って出て行こうとした。レイナスは、ドアに術を掛け、男を閉じ込めた。
「おまえが、預言者か?」
レイナスが尋ねたが、男は怯えた様子で答えない。
「おまえが、村人をけしかけたのか?」
すると、男が言った。
「おまえらが悪いんだ! おまえらが、魔物を退治したりするから」
「僕たちじゃない、おまえこそ、魔物なんだろう?」
レイナスが言うと、男は「許してくれ!」と言ってその場に跪いた。
レイナスは男に歩み寄ると、「許すわけない」と言って剣を抜き、男に振り下ろした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます