第6話「空の青は君の青」

私、青景ソラハは。待島スミカさんと。

時が経つのも忘れて話してた。

笑いながら、喜びを共有しながら。


沢山のことを。まるでずっと、昔から友達だったかのように。


気が付けば、もう11時。


「そろそろ寝なきゃ、ね。明日学校だし、さ。」


あどけない表情のスミカさん。


「それとも、風邪引いたことにして、さぼっちゃう?」


イタズラっぽく、スミカさんは微笑む。


「サボっちゃおっか」


その悪魔のような蠱惑的な提案に。

私は、うん、と頷く。


「ソラハさん……ソラハのお母さんには、わたしが巧く誤魔化しておくね」


スミカさんの演技力が折り紙つきなのを、私は知っている。


うん、ともう一度頷く。


消灯の時間は、23:58.


「魔法の時間は、終わり。わたしは――」


半分目を閉じていた私は、聞き取れないまま、微睡みのなかに落ちて行く。


――私は、夢を見ていた。スミカさんが笑っている。私は、彼女の手を掴もうとして――掴めない。


焦って、私は手を伸ばすけど、掴めない。


駄目。待って。行かないで。

こうなるのは、わかっていたのに。

だけど、だけど、どうして、なんで。なんで今更。

私も、一緒に――連れてって。スミカさん。

ううん、スミカ。


私が、目を開けると。

スミカさんが手を繋いでくれていた。


「どうしたの? うなされてたけど」

スミカさんが不思議そうに訪ねてくる。


「嫌な夢見ちゃった」


「そう。朝食、用意してあるわ」


テーブルの上には、ベーコンエッグトーストが二つ。

紅茶は、スミカさんの分だと思う。

珈琲は、きっと、私の分。


そうか。昨日、私、ここでそのまま寝ちゃったんだ。


「ベーコンエッグ、嫌いじゃないよね?」

スミカさんが、少し不安げに聞いてくる。

「ううん、私好きだよ。ベーコンエッグ。」

「良かった。嫌いだったら、どうしようかなって」

スミカさんは飛び切りの笑顔を私に向ける。

それが凄く魅力的で、私は見蕩れてしまう。


「冷めないうちに、食べてね」

「………あ、うん」

私は慌てて頬張る。


「あつっ」

笑い転げるスミカさん。

「言い忘れてたけど、それ焼き立てだから。結構熱いよ」


私は少し拗ねた顔をして。フーフー息を吹き掛けながら、少しずつトーストを口に含む。


学校と親への電話は、手際良く、スミカさんが済ましてくれた。


「ソラハさんは風邪だって言っといたから。今日は一日、二人で遊ぼ?」


私は、スミカさんの言葉に頷く。


「流石に、制服はまずいよね」


そういって、スミカさんは洋服を貸してくれた。


「んー。合うのが、ない。」


スミカさんは私より背が低い。


「ソラハさんは制服でいいか。これを上に着といて」


そういってスミカさんは大きめのダッフルコートを貸してくれた。


「スカートは、私のロングスカートでなんとかなると思う」


そういって、スミカさんは私にロングスカートを手渡す。

確かにこれなら、バレないかも。


「じゃあ、着替えたら出発ね」

ウインクして、飛び切りの笑顔。


私にとって、初めてのずる休み。

映画行ったり、ウィンドウショッピングしたり、二人でアイスクリーム食べたり。


スミカさん、ずる休み慣れてるっぽい。


「ハイ、お客様、追加注文、ストロベリーのダブル」

スミカさんが飛び切りの笑顔で私にアイスを手渡す。

「ありがとう」


私がアイスを舐めていると、唐突にスミカさんが私の頬にキスしてきました。


「ほっぺた、アイスついてたよ」

スミカさんが笑う。


本当にアイスがついていたのか私にはわからないけど。

そういうことでいいや。


アイス屋を出て、うーん、と私は背伸びをして気付く。

空は昨日のどしゃぶりが嘘のように透き通っていた。


私は、彼女と別れる。


「明日また、学校で会おうね」

「うん」


私は、そう言いながら。


スミカさんの透き通った、その青い目を見つめていました。

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