第3話窓口のセイラ

 いつもの居酒屋。今日もセイラとつぐみはいつもの桟敷席で飲み食いしている。

「ねえ、つぐみ。仕事の調子はどう?」

「なんとかね。頭よりも体が慣れて来たって感じかな?」

「なるほど」

 セイラはゴクゴクとサワーを飲む。

「最近、特急券売場にも回される様になったんだけど」

「へー。遂に出札デビュー?」

「うん。人の少ない時間帯だけどね。でも、結構緊張する」

「それは、わかるわ~」

 セイラはつぐみの緊張する気持ちに理解を示す。窓口で切符を売るのは、ラッチで改集札するのとは別の雰囲気があるからだ。


 朝9時過ぎ。

 朝のラッシュは過ぎつつあり多少の静寂が訪れる。前任者から引き継ぎや現金、日付印に乗車券の在庫確認と帳簿の差異を確認する。出札と改札を掛け持ちするが、客が少なくなる時間帯なので思った程の忙しさはない。列車が来ない時間帯は通路に鎖をかけて改札を閉鎖する。客の動きに合わせて窓口も閉鎖して清掃などの雑務もこなす。

 列車が来る時間帯になると窓口や改札を開放して接客する。基本的にこれの繰り返しだが、現金と乗車券の有り高は常に把握しておく。大都市圏に近く、最近は珍しくなった硬券を扱っている為か、1人で何枚も同じ切符を買ったり、何種類の切符を買ったりする客なども見かける様になった。そんな中で、

「やあ、セイラちゃん。頑張っているね」

「仕事はもう、慣れたかい?」

 などと顔なじみの客に声をかけられると、なぜかホッとする時がある。


 忘れ物や駅貼り広告の応対などの仕事も合間に入って来るのでヒマという事はない。

 学校が終わる時間帯になると今度は忙しくなる。セイラが勤めている会社では、定期券や回数券といった前売りは売っていないので、学生達が切符を買いに行列を作るからである。列車間隔も短くなり、他の窓口も開くが19時頃までは忙しい。


 22時。早番だとここで勤務終了で仮眠時間となる。寝れる時間は4時間位しかない。朝4時前には起きなければいけないからだ。ちなみに遅番は24時で終了、6時勤務開始である。遅番は締切作業があるので結構大変だ。

 朝5時。駅舎の出入口を開放して客を迎え入れる。大体いつもの顔ぶれである。挨拶をして切符を売り、乗車券に入鋏する。交代までこの調子なので結構忙しい。朝食は手空き順に食べるが、列車間隔が短くなるので手短に済ます。

 朝のラッシュは工場操業の関係で6時台から9時台と案外長い。出札口での入鋏は中止して切符売りに専念する。改札は別の人に任せる。

 9時過ぎ。交代が来て引き継ぎ。終了点呼が終わると勤務終了となる。


「ほえ~」

 つぐみはドヤ顔で話すセイラの話を、あんぐりと口を開けて聞いていた。


                                  つづく

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