鳥を少々
二度目のデートは大きな池のある公園にやってきた。秋風がどこかにある金木犀の香りを運ぶ。さざ波立った湖面に魚影がきらりと光る。
僕らは手を繋いで橋を渡った。ボート乗り場で顔を見合わせ、二人揃って首を振る。カップルでボートに乗ると別れる都市伝説を彼女も知っていたかはわからない。
スワンボートの脇を鴨が泳いでいく。沈んでしばらく顔を出さないのは鵜だろうか。一方、足元では僕らの間を鳩が邪魔する。そんな鳥たちを眺めながら、お見合いの席で魔法の話題になったとき、彼女が「鳥も少々」と話していたのを思い出す。
「そういえば、あなたの鳥はどんな鳥なんですか?」
「私、鳥はまだまだなんです。とてもお見せできるものじゃなくて」
「それなら余計に見せていただきたい。上達する前と後と両方見れるなんて贅沢でしょう?」
重ねて請うと、彼女は困り顔でうなずいてくれた。
「少し離れていてください」
彼女は落ちていた小さな羽毛を拾うと、くるくると指先で回してから空に放った。
ばさばさっと大きな音がして、飛び立ったのは青鷺だった。僕は思わず、うわっと声を上げてしまう。彼女は申し訳なさそうにこちらを見ると、
「すみません。小さい方が難しいんです」
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