第109話 ピエールの話4

ピエールの仕事はうまくいっていた。

 

ネオ社会労働党、アグリッピナ・アグリコラへ

のコンサルティングは、第3エリアにいる上司、

セルジオを通してしっかりバックアップされている。

 

警備のほうも順調だ。順調というのは、襲撃事件

が発生しているが、なんとかなっているという

ことだ。

 

先日も、数人の悪漢が現れたが、その際は、

アグリッピナが慌てすぎて悪漢のほうへ走って

逃げてしまい、その際につまずいてバランスを

崩し、頭部が悪漢に当たって撃退するという

幸運があった。

 

アグリッピナは、あんな演説もやってみせたり

するが、実際はドジでかわいい女の子だ。

 

後日さらに大人数で襲われたのであるが、その

時は慌てたアグリッピナの肘が僕に当たって、

そのまま僕は気を失ってしまった。しかし、

気づいてみると悪漢どもがのびていて、

アグリッピナも気を失って倒れていたな。

 

まったく僕は運が強い。

しかし、まだまだこれからだ、彼女はぜったい

僕が守ってみせる。

 

一方こちらはバレンシア共和国のテレビ画面、

音楽バンド、ネハンのメンバーが、全員

スキンヘッドにしたことと、ネオ社会労働党

のマスコットキャラクターに選ばれたことが

ちょっとしたニュースになっていた。

 

ネハンは以前よりも見た目もだいぶ変わっており、

それは特に服装で、4人とも黒い詰襟の、

しかし少し通常より裾の長いものを着ている。

 

その黒の上下には、シルバーの文字の刺繍が

なされており、富国強兵、欲しがりません

勝つまでは、鬼畜第3、大バレンシア帝国、

天上天下唯我独尊、夜露死苦、屍皇帝万歳!、

などと書かれてある。

 

会見する4人のメンバーのうち、ボーカルの

マット・コバーンと、ベースのエディ・ローランズ

はなにかすっきりとした表情をしているが、

 

ギターのサージ・オダジアンとドラムスの

カール・スミスはどことなく浮かない表情だ。

実際この二人は、裏で、なぜここまでやるんだ、

おれたちの大切なものを取り戻したい、

マットとエディは最初からそういう傾向だった、

などと言っていると噂されている。

 

ネハンのファンも二分された。今の傾向に

賛成する好戦派と、行き過ぎだと批判する

平和派だ。

 

しかし、今のところ圧倒的に好戦派のほうが

多かった。

 

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