第108話 ピエールの話3

派手な赤いスーツに金髪の美女の演説が始まる。

 

「有権者諸君、

私がアグリッピナ・アグリコラである!」

 

「政権多数派は、第3エリアおよび太陽系外縁に、

関税引き下げの要求を行っていくことを決定した」

 

「しかし!」

 

「もはやそんな悠長なことをやっている段階ではない!」

 

「われわれネオ社会労働党は、この度の連立により、

防衛省の、防衛大臣の座を手に入れ、副党首である、

ムフ・ブハーリンがその座に就いた」

 

「私はその状況に安住しない、私はそんなものに

一切興味がない!」

 

「前政権の失策のひとつは、景気悪化である、

そこに所得格差も広がっている、労働者たちは

苦しんでいるのだ」

 

「しかし!」

 

「企業の内部留保は過去最高となり、環境汚染も

進んでいるにも関わらず、前政権は企業に対して

無策であった、とくに食品の汚染が深刻であった」

 

「だが、それはいい!」

 

「医療保険は年々上がるにもかかわらず、医療の

環境はいっこうによくならない、国民の健康状態は

年々悪化している!」

 

「軍事費が年々上昇して国の生産能力に対して

かなりの比率になっているにも関わらず、平和

主義を貫く、その矛盾を誰が説明するのか!」

 

「軍事基地を減らし、軍を少数精鋭化すべきである、

有権者諸君、いかがであろうか!」

 

「わがバレンシア共和国、不景気の最大の原因は、

閉鎖された市場である。第3エリアおよび

クリルタイ国は、市場を自由化すべきだ」

 

「そしてそれを実現するために、もはや軍事的

圧力しかない! 外交努力など、もはや多数派の

お遊びでしかないのだ!」

 

「過去の世界大戦の原因が、市場の閉鎖性である

ことは明白である! 少数精鋭による決戦により

勝敗を決し、大戦の悲劇を避けるべきである! 

そしてわれわれは市場の自由化を永続化し、

永久の平和を得る! 国々は、助け合うべき

なのだ!」

 

「労働者諸君、いざ、立ち上がろう! 農民の諸君、

鍬を武器に持ち替えよう! 技術者の諸君、兵器を

発明しよう! 学生の諸君、ペンを剣に持ち替えよう!」

 

「ともに労働者の国を実現し、そして私は

天に召されるであろう!」

 

アグリッピナ党首の演説に数十万の大歓声があがる。

そして周囲を警戒するのは、アキカゼ・ホウリュウイン

と名を変えた、ピエールであった。

 

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