第102話 ディエゴの話8

エマドの回想が行きついたとき、現実も倣った。

 

マットがウィッグをとり、その下にピカピカの

頭頂部が。「私たちは常に、弱者の味方だ」

 

一同、声も出ずに、口が開いたままだ。

そして、一同は、ギターのサージ・オダジアンのほう

を向く。サージは、おれは違う、と手を横にふる。

 

そして一同は、ドラムスのカール・スミスのほうを

向く。カールも、おれは大丈夫だと手を横にふる。

そして最後に一同はベースの、スキンヘッドの、

エディ・ローランズのほうを向く。

 

エディは、親指を立てて、しっかりと大きく頷いた。

 

マット・コバーンが続ける。

「私もやりたい音楽が実はいっぱいある」

 

「そのほとんどは私の責任だろうな」

一人の男性が部屋に入ってきた。それに続くのは、

ケイト・レイ、コウエンジ連邦国務長官と、

サキ・キムラだ。別室で話していたようだ。

 

入ってきた男は、ネハンのプロデューサー、

エリオット・カポーンだった。

 

「この国で、自由に音楽をやるということは、

実は非常に危険なことなのだ」

エリオットは語る。人と異なることをやる、それだけで

危険思想と捉えられる風潮がこの国にあるらしい。

 

ケイトが話し出す。

「クリルタイ国、外務次官リアン・フューミナリ氏

の案があります」小声になる。エリオット・カポーン

は、盗聴等の部屋のセキュリティに関しては、

自信があった。

 

この日のアンドロイドの件は、事件として伝えられた。

第3エリアから来たバンドメンバーのうち数名が

負傷したこととなっていた。

 

そして、それ以降、ネハンのバンドの方向性が急速に

右傾化する。誰の目にも、その事件により、何者か

から圧力がかけられたように見えた。

 

数か月後、

 

バレンシア共和国の世の中は右傾化がさらに加速し、

それに便乗してネオ社会労働党を名乗る、中身は

超極右政党なども誕生した。そして、極右政党

と超極右政党による連立政権が誕生した。

 

ネオ社会労働党の党首は、アグリッピナ・

アグリコラという、若く体格のよい女性、派手な赤い

スーツと赤い縁の眼鏡がよく似合っていた。

 

時代はこのまま、どういった方向に進んで

いくのだろうか。

 

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