第66話 ゴシの話7

提案はすぐに通った。次の航行期間に入った

のちに実施される。


いよいよ、木星ラグランジュポイント第4エリア、

都市オイラトに到着する。ケイト長官や軍関係者

とはここで別行動となる。


いったん今日は街の宿泊施設に泊まり、そして

明日の夕方ライブだ。外縁で一緒に回ってくれる

音楽ユニットのメンバーの一人とホテルの

入口で会う。


「まいど、お疲れさまです、タナカです」

長身の、クリルタイ国で活躍する音楽ユニット、

サクハリンのDJ兼キーボード担当、ジェフ・タナカだ。


「旅はどうでした?けっこう遠かったんと

ちゃいますか?」

若干訛りを感じる話し方だ。


「月第3エリアから8日間ですね」ゴシが答える。

「船内けっこう暇やったんとちゃいます?」


エマドが答える。

「僕ら実は空母で来たんです。航行中はクリルタイ国

の空母とずっと合同軍事演習で戦闘機乗ってましたよ」

「へえ!君らバンドやりながら戦闘機乗るんかあ、

そりゃすごいな」


ゴシも同時に、え? という顔をしている。


「じゃあとりあえず今日は泊まってもらうだけ

なんですけど、明日のお昼とか一緒に食べません?

案内しますよ近所ですけど」

ジェフさんが言う。


「おいしいとこ知ってますねん」

「ぜひ」


サクハリンのジェフ・タナカさんが帰って、

フロントでチェックインする。


しかし、このホテルの造りもかなり豪華だ。

政府高官の同行者とはいえ、ここまでもてなして

くれるとは、と皆感心している。


「別に最近建てられたわけでもないみたいだし」

「よーし、フェイク、風呂行こうぜフロ!」


温泉も付いている。


「もちろんゴシさんも行きますよね?」

「エマド、さっきの話だけど」

戦闘機に乗っていたという件だ。


「ゴシさん、冗談に決まってるじゃないですか、

こういう世界は最初のインパクトが大事だって、

前に言ってたのゴシさんですよ!」


「お、おう、そうだな、うん、そうだよな」


夕食もとても豪華だった。羊肉を焼いたものを

中心に、なんかあまり見たことのない料理が

次々と出てくる。


「君たちな、本来ツアーというものは、もっと

たいへんなもので、料理の修行と同じで」

ゴシのお説教もあまり気にならないぐらいに

皆満足していたのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る