第67話 ゴシの話8

お昼にジェフ・タナカがホテルまで来て、

ホテル近くのレストラン、フェンユエまで

歩いていく。


小麦粉に水を混ぜて捏ねたものに自分の好きな

ものを入れ、焼いて食べるタイプの料理だ。

テーブルについている鉄板で自分で焼いても

よいし、店員に頼んでもよい。


今回はジェフ・タナカ自らが全員分焼いてくれた。


「これ、旨いっすね」

「ゴシさん、これ、帰ってやりましょうよ」


ゴシも食べてみたがたしかに旨い。

「ジェフさん、これ、何入れてるんですか?」


「あ、これ?僕いつもヌードル入れるんですよ。

あと、スパイスでちょっと辛くしても旨いですよ」

次来た時はもっと長期滞在してもっといろんなものを

食べていってもらえたら、とジェフは奨める。


食べ終えると、いったんホテルへ戻り、

ジェフの運転するホバーに機材等を積んで

ライブ会場へ向かう。


今回はクラブ・ブハラというところだ。


「いやー何からなにまですみません」

「ぜんぜん大丈夫ですよ。やっぱり遠方から来たら

いろいろ大変でしょうから」

すでにメジャーで活躍しているアーティストである。

なかなかここまでは普通やってくれない。


会場はホバーで行って20分もかからない。

開演までは4時間ほど。準備を始める。


今回は、普段ビジュアルジョッキーを務める

ヘンリク・ビヨルクが参加していないが、

事前にクリルタイ国側に映像ネタを送付して、

入念に打ち合わせしてある。


クラブ・ブハラは規模でいうと中型のクラブ兼

ライブハウスだ。入場人員は1万人。

それでもぎゅうぎゅう詰めにはならないように

計算されている。


これ以上となると、5万人や10万人、100万人

といった規模になるわけだが、音響やアーティスト

との一体感などを重視するとやはり1万人という

規模が限度になる。特にダンスミュージック寄り

のアーティストは。


そして、このクラブ・ブハラは、第3エリアの

構造都市マヌカの同等規模の一番良いクラブと

比較しても、遜色ない設備だった。


いや、もうそこに入るまでの街並みがすでに

なかなかの都会なのだ。

「ジェフさん、ここ、なんか凄いですね」

エマドが思わず口にしてしまう。


「そうでしょ?でも実際に演奏してみると

もっと気に入ると思うよ」

とジェフが返す。

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