第65話 ゴシの話6

このシステムの平和が、

自分の肩に乗っかっているのだ。


と、遠くに光のきらめきが見える。否、

それほど遠くでない。いや、きらめきが

近づいているのか。


複数の光線が行きかっている、これは、

素人目に見ても、戦闘だ。周りを見渡す

が、特に戦闘状況に突入したような

雰囲気はない。


民間船として接舷しているとはいえ、

何かあれば船内放送を流して、ふつうに

考えれば空母側へ避難させるはずだ。


訓練の可能性が極めて高い。あの距離なら

確実にレーダーで捉えているはずだ。

しかし、私は軍事に関して素人だ。


何らかの理由で目視で確認しており、また

何らかの理由で私しか気づいていない、

としたらどうだろうか。


すぐにトム少尉、またはブラウン少佐に

伝えないといけない状況に陥っている

可能性もある。


誰かいないか周りをキョロキョロと

覗いながら、もう一度窓の外を

確認する。


「おわっ!」


突然白い人型機体が窓のすぐ外に現れて、

ゴシはのけぞった。のけぞった先がさっき

から座っていたソファだったので、床に

倒れ込むようなことはなかった。


機体が接触通話で何か言ってくる。

「ゴシさん、元気?」

女性の、アミの声?


すぐその白い機体は飛び去った。

自分の狼狽ぶりが誰かに見られていな

かったか、もう一度あたりを見返す。


軍に頼んで乗せてもらったのか?

だが訓練であんなに客船に接近

するだろうか。


しばらくしてからアラハントが帰ってきた。


「やあ君たち、お疲れさん」

「お疲れ様です」


「あの、もしかして人型機械に

乗せてもらったりしてた?」


「いえ、僕たちそこでずっとダーツ

やってましたけど」


「ん、あ、そうか、いやそれならいい、

夜更かししないようにな」


そうだよな。いくら軍と仲良くなっても

人型に乗せてくれるまではならないよ。


アラハントの5人が各個室がある

廊下までやってくる。

アミが笑いをこらえられないようだ。

「ゴシさん、めっちゃのけぞってた」

「来る前に窓の偏光解いてたから

よーく見えた」


ゴシさんもたいがいだけど、この5人も

けっこうタチ悪いよね、とマルーシャ。


というわけで、ゴシに仕事を与えるべく、

ウインとマルーシャは献案する。

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