第49話 ヘンリクの話10

ステージのほうに手をあげて応えながら、

映像を切り替えていく。


ゲルググではよくあることだ。


同時に3D映像をスタートさせる。人型機械が

戦っている3D映像だが、アミからもらったもの

で、アミは元ネタを軍からもらったとか。


ゲルググなので天井付近で小さく映し出されて

いるが、大きなライブハウスでこれをやると

大迫力だ。


2Dモニターではかわいそうに、ウニーが

人型機械に画面外に蹴り出されている。


アミのデス歌が、今日はショートバージョンで

2曲ほど。実際このスタイルでやるとライブ

はやる側も客側も30分ももたないとか。


そして、

ボーカルのマルーシャ・マフノの登場だ。


低音が一気に抜けて、透明な音色に変わる。

3D映像と2Dモニターは未来都市テンジクだ。

映像は都市のなかにどんどん入っていき、

巨大なライブハウスの中で歌うマルーシャ

の映像になる。


デスな雰囲気から、一気にハッピーな

雰囲気に変わる。マルーシャの声は、

ハスキーで低音側もしっかりしている

いい声だ。


が、ときにアミとマルーシャの二人とも

デスモードに入るパターンもあるらしい。

今日このあとやるのかどうか。


フロアのほうはそれなりにお客さんが入って

盛り上がっているが、ぎゅう詰めというわけ

でもない。


隣のサクティでもライブの様子をモニターに

映しているのもあって、むしろサクティの

ほうがお客さんは多いかもしれない。


ゲルググでこの3バンドが出演する場合は、

だいたいはネットワーク上で告知しない。

なので近所の常連客が適度に楽しむ雰囲気だ。

でも、どのバンドも都市上層の中規模の

ハウスをワンマンで満員にするほどの実力が

すでにある。


と、アミのお兄さん、テルオ・リーが

カウンターに座っているのに気付いた。

たまに妹のライブに顔を出すのだ。


ジャージ姿、おそらく寝間着だろう、それに

サンダルを履いて、ゲルググとはいえかなり

リラックスした姿だ。坊主頭に近い短髪に

澄んだ瞳で、賢人のような、でも何か抜けて

いるような、不思議な雰囲気をもっている。


ステージではマルーシャのMCが始まっていて、

育ちの良さそうな話し方で今日明日の

天気の話なんかをしている。


「じゃあ今日は新曲を2曲ほど紹介します、

まずは、プロキシマ・ケンタウリ」

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