第41話 ヘンリクの話2

構造都市マヌカの人口は2億人と少しだ。

この都市の適正人口は3億から5億人だが、

都市のスペック上は10億人住んでも

問題ない。


上から50層目にあたる最下層では、

約100万人が暮らしている。下層にしては

多いほうだ。


おそらく、大学が設置されていることが

原因で、人口が多い。マヌカでは大学

設置が全体的に遅れており、特に中間層に

まだあまり設置されていない。


最下層の中央北壁から広がる都市がノース

フィフティで人口40万人、南壁側に

あるのがシンジュクで20万人、残りの

人口は各鉄道駅周辺に散在する。


ノースフィフティとシンジュクをまっすぐ

結ぶ鉄道が中央線、途中で分岐して西側エリアを

迂回して中央線に再合流するのが西線、東側

エリアを迂回して同じく戻ってくるのが東線だ。


シンジュク駅を出ると次がキタシンジュク駅、

そこから西線が分岐して、マゼラン駅、

ミノー駅と続く。


そのミノー駅近くの安いアパートにヘンリク・

ビヨルクは家族とともに住む。


「ただいまー」

午後一の大学の授業を終えて自宅に帰ってくるが、

家には誰もいない。親はヘアーサロンをやって

いて、二人とも閉店まで帰ってこない。


弟が二人いるが、ふたりとも家を出ており、

上層でそれぞれ一人暮らしをしながら

美容や理容の勉強をしている。


ヘンリクはスポーツウェアに着替えると、

また外に出た。アパートは駅前商店街の上に

あるが、裏口から路地に出る。


そこから、南東方向へ、軽く走ったり歩いたり

しながら、家がまばらになっていく、水田と

小さな水路が敷かれた田園風景だ。


気温は春から夏の設定に変わるころだが、

すでに暑い。薄い羽をもったトンボと呼ばれる

昆虫が水路わきに止まっている。


駅から線路沿いに北東方向に走れば堤防幅

200メートルほどの川もあるが、今日は

そっちへは行かない。南壁の山のほうへ向かう。


「午後から雨とか言ってたな」


今日は負荷をあげるための重りもつけていない

ため、やろうと思えば山道を走って登れるが、

いつもの丘の神社のところで折り返した。


往復1時間ほど運動して、シャワーを浴びたら

端末を前にして情報をチェックする。

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