第40話 ヘンリクの話

ヘンリク・ビヨルクという19歳の青年の

話をしていく前に、彼が住む都市について

の説明をしていきたい。


ヘンリクが住む都市は、月の裏側の

ラグランジュポイント、重力が安定している

ため宇宙空間での都市建設が比較的

行いやすい空域にある。ここは、第3エリア

と呼ばれている。


その構造都市は、

バームクーヘン型都市、マヌカと呼ばれている。

バームクーヘンといっても、円形をしている

わけではなく、食べやすいサイズに切り出した

ときの形状だ。


ざっくりとした言い方をすると、だいたい

一辺100キロメートルの立方体に近い大きさ。


これが弱重力を生み出すため、ゆっくりと

回転しており、中心軸に長大なケーブルで

接続されて、その先に同型のバームクーヘン型

都市であるメイプルが存在する。両構造都市が

引っ張りあいながら回るかたちになる。


都市マヌカは、メイプルも同様であるが、

階層構造をなしており、高さ100キロの

構造の中に50層が存在する。


各層は、1キロの厚さの地面と、1キロの

高さの空間と、そのうえにまた1キロの

あつさの天井、次の層にとって地面、を

もつことになる。


この型の構造都市は、比較的新しく、過去の宇宙

空間の構造都市の歴史を受け継いで、様々な工夫

がなされている。


地面にあたる部分に充填する素材も、強度が

ありかつ軽量のものが使用されている。金属

なども資源利用の関係で極力使用しない。


気密をたもつために、生きている樹木、粘性の

樹液をもつものが多用されている。木の繊維を

ハニカム構造に成型しなおした部材も

使用されている。


建築物の種類を、使われている素材の一番割合

が多いもので決めるとしたら、木造建築物、

といってもおかしくないレベルだ。


この階層都市を上から見ると、正方形の面の

中央北側と南側に層間をつなぐ主要交通

機関がある。


構造都市が回転する方向に東西、

直行するかたちで南北だ。


ヘンリクが住むのは、その最下層だった。

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