第26話 アミの話2

そして、その軍人がやってきた。


「なんだ、君たちか」

トム・マーレイは驚いた顔を見せた。


ちょうどリアリティのプレイを終えて5人が

出てきたところである。


「あ、トムさんどうも」


5人は体力づくりのため最近よくハントジムに

通っていたが、そこでよくトムともいっしょに

なった。


「なにって?スカウトだよ!君たちに

戦闘機乗りになってもらうのさ!」


巨大人型機械のことをこの時代のひとは戦闘機と

呼んだ。先週から張り込んでいたが、今日やっと

見つけることができたのと、プレイするときは

それぞれハンドルネームを使うので、彼ら5人

だとは気づかなかったらしい。


「先週僕らは地球に行ってたのさ、登山

したんだぜ」

「それぞれサブウェポン持って山頂で

演奏したのよ」


サブウェポンとはそれぞれが得意とする小型の

楽器のことだ。トムは何のことかあまりわかって

ないみたいだが、地球で登山と聞いて興奮

したみたいだ。


「いや、今回は5000メートル級だよ、

夜行登山、ガイドなし」

「違う違う、ゲリラ戦の練習じゃないって」


創作活動のために色々なところに行って色々な

経験をする、という主旨らしい。旅費は

マルーシャが工面してくれているのだろうか。


「アルバイトだよ、アーティストは何でも

金がかかるんだって」とエマド。


「これはいいアルバイトになると思うけど」


「詳しく話を聞かせてもらおうかしら」

ファイナンシャルプラニングの知識も持つウイン

が言った。ウインは活動に関するお金の出入りを

すべてカウントしていて、マルーシャが工面

してくれたぶんも将来はきっちり還すつもりでいる。


近くのお茶屋にみなで寄る。


「まず安全面について確認したいわ」

「遺族補償については軍から充分な・・・」


というわけで話はまとまった。

軍属はあくまでパートタイムとすること、

なるべく自陣側に引き込んだ地点で迎え討つこと、

搭乗機は充分な適正がない者は迎撃しない、

不利な場合は母艦ごとすぐ退却すること。


これらが通ったのは、この時代パイロット適正が

非常に高い者が少数存在し、圧倒的な成果を

出していたためだ。チームであればなおさらで、

彼らは金額になおすと非常に高価だった。

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