第20話 テルオの話5

少年期のそういった環境の反動か、第3エリア

コ連に戻ったテルオは、ネットワーク上であるが

自分を表現しだした。


まずは曲を作った。


ブレイクビーツと呼ばれる一見ランダムに聴こえる

ビートの繰り返しに簡単なメロディーとフレーズを

乗っけたシンプルなものだったが、その次に

歌も入ったものも作った。


歌と言っても、囁くような語りかけるような

口調から徐々に盛り上がりを見せるようなもの。


いずれもテーマは太陽系から外へ飛び出す、

というものだった。


それらの楽曲を映像に乗せた。


この時代、ネットワーク上で多数の人が参加する

タイプのゲームがあった。3D空間で非常に

リアルな仮想空間を見せることができた。


このゲーム中のデザインを開発するインターフェース

を公開するというサービスがあった。


つまり、人や衣類、道具、乗り物、町、それらを、

ゲーム中で登場するようなリアルなクオリティで誰

でも自由に作成し、閲覧できるようになるサービス。


作った人物や町を使って動画を作成し、配信する

こともできた。テルオは自ら人や町を作成し、

自ら作った曲をつけた。


まあ、そこまでは誰でもやれる、やっていることだ。


テルオが違ったのは、まず、都市や人のデザインを

あるコンセプトを元に自動化するアドインを

作成したことだ。


それにより、巨大でリアルな都市を短時間で作成

できる。テルオはそれで、次の恒星へ旅立つ

巨大な移動都市をいくつもデザインした。


それはどれも少し奇抜な、この先10年あるいは

100年先の技術で実現できそうな都市デザイン

だった。


これがコ連の特殊な趣味を持った若者を中心に

話題になり、けっきょく今では広告収入がそこそこ

入るまでになった。

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