第13話 サトーの話11

あらかじめ決めていた服装に着替える。

そしてバックパック。

妻がふだん通りなのがむしろ気持ち的に助かった。

子どもといっしょに部屋で見送り。


そのままジムのミーティングルームで軽く打ち合わせて、

シャトル乗り場まで出発する。


ジェシカが見送り際、最高のアドバイスをくれた。

「調子のいいときほど体が重くなったように感じるものよ」

「球技の試合でも、いい選手ばかり集めたチームは意外と

 弱いものよ、最後まであきらめないで」


第四エリアへはまず民間のシャトルで向かう。3時間弱の

道のりだ。3人とも、ふだんジムで着ているジャージ姿

だが、それぞれに中に何か着込んでいる。


緊張で口数が少ない、というよりも一般のシャトルなので

乗客もいるためミッション前に会話しないようにしていた。

というより、正直このあたりのことをあまり憶えていない。


そして、空港で自動運転で到着していたシャトルに

乗り換える。民間カラーにしてある軍用だ。


ターゲットの工場までも自動運転で行くが、3人乗る

には広めの機内でそれぞれウォーミングアップを行う。

消化のいいものを少し口にする。


そして、ジャージを脱ぐ。


ドンは黒い戦闘服、しかし、金属性でなく強化プラスチック

性のものを選んだのは銃器と判定されないためだ。

体の防御もあるが侵入者の主力が彼だと思わせるための装備。


そしてアミは全身スーツタイプの水着。水に濡れるとぬめる

奴だ。強化された水泳帽にゴーグル、グローブ、丈夫な靴。

ボトルで水着をまんべんなく濡らしていく。

これだけでほぼほぼ掴めなくなる。掴まったら終わり。


そしておれ、チンピラ風のシャツと短パンに靴だけ

しっかりしたもの。シールのタトゥー。防御力はゼロだ。

ここを攻撃しろ、というわけだ。


まんまいかれた民間人の侵入者の風体で、突入時間が近づく。


5分を切ったあたりでアミが言った。

「ライブ前にいつもやってるやつやろうか」「いいね」


三人で円陣で肩を組んで、

「ハントジムいくぞー!!」「よっしゃー!!」

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