第12話 サトーの話10

では種明かしをしよう。

ターゲットとなる民間工場は標準的な工業ユニットで、

第三エリアの近所にも同型があった。


そこを借りて、ジムのプロモーションビデオの撮影の

風体で侵入経路から戦闘まで練習したのだ。


実戦的練習をやりつつも当日に向け体重もしぼる。

実はジムに来て以来、体重が10キロ増えた。しかし、

体脂肪は半減した。


もちろん体重別の試合に出るわけではないが、ベストな

体重を決めて、そこにもっていく。2週間前から

徐々に練習量を落とし、炭水化物中心の食事に

なっていった。


正直、頼もしい味方に囲まれてけっこう気分的に

楽だったが、やはり日が近づくにつれてプレッシャー

が高まってきた。


一週間切ったあたりで聞いてみた。

「いやー死ぬほど緊張してますね」

と言いながらドンはにこにこしている。

いつもより目がキラキラしてないか?


アミはー、趣味仲間と遊びに行ったとか。


聞く相手が間違っていた。よく考えたらこいつら

常人じゃない。おれひとり場違いだったのか。


「いやーリングに一人で立つとものすごい緊張で」

「どんなアーティストでもステージでは緊張するものよ」


おれはリングにもステージにも立ったことがない。


そして当日が来た。

起きて、気づいた。体が重い。

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