第11話 サトーの話9

「叔母さんひさしぶり」ジェニーが挨拶する。

「私の姉のナミカ・キムラよ」

エマが紹介してくれた。


なんでもふだんは第三エリアで軍事コンサルタントを

やっているらしい。今回のように軍のプロジェクト

チームに所属してミッションをこなすこともよくあるとか。


それにしても露出の多い涼しげな、そして派手なルックス。

「叔母さんは太陽系で最強なんだよ」

ジェシカがささやいてくる。普段は軍事関係に見え

ないように工夫してるとか。


第三エリアのほぼすべての国を担当しているらしいが、

このエリアの国はすべて軍事同盟で結ばれているので、

どの国軍に所属しようが大差ないらしい。


「あなたたち二人のことはエマからよく聞いているよ」

ドンとは旧知らしい。


「今回のミッションは、相手の意図を探り出すまでの

 時間稼ぎとして非常に重要よ」

「背後で第2エリアが動いていることがわかってるわ」


驚きだった。第2エリアは一国一領土制の、一兆人を

超える人口をかかえる超大国だ。

今回明確な武力行使のかたちをとらないのは、

背後にいる超大国を刺激したくない意図もあるようだ。


「暗殺仕様のアンドロイドを使って、小国の要人、

 とくに個人国家を狙っている。」


「その理由は何なんですか?」

思わず質問してしまった。


「いい質問ね」

「今のところその理由はわかっていない。諜報部門を

 使って情報を集めているところだわ」


「でも、太陽系外縁部の状況が関係してるかもしれない、

 というのは個人的な読みね」


「今回のミッション成功により相手の意図していた

 ことが数年遅れることになる」

「キサラギ社の正規ルートを通さずに自分たちで

 修理することになるからね」


外縁部と呼んでいるのは木星以遠の空域で、人類が

進出してはいるがまだ未開の宙だった。

火星以内が3兆人に対して、以遠は1,000億もいない。


「というわけで、ちょうど一か月後ね、準備

 ぬかりなく」

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