第10話 サトーの話8

トムと名乗ったその軍人はいかにもマジメな見た目と

話し方だった。


「場所は第4エリア最外部の民間工場で、民間のシャトル

 で到着後、現地手配のシャトルに乗り換えます。」

「ターゲットは1028体ですが、ジェニー型1024体に加えて

 特殊型4体です」

「諜報部からの連絡では、当日6割前後が電子攻撃により

 動作不可となる予定です。これは、バグを埋め込んだ

 プログラムをインストールされた状態で起動することで

 可能となりますが、詳細は割愛します」


「当日現地は銃器による武装はありません。従業員の

 出勤もなし。重力1Gで大気は通常です」

「ターゲット機体ですが、民間工場で調整後、軍事施設

 へ移される予定です。そのため、叩くなら今回ですね」


「参加される3名は我が国の特殊部隊所属という扱いに

 なります。遺族の手当ても保証されます」

今回は打ち合わせに妻も参加している。このトムの

言葉に大きくうなずいた。


「3名は武器不所持の状態で突入します。ターゲット

 機体があるラボに到着後、10分程度かく乱したのち、

 シャトルで脱出します」

「現地警察および警備会社はすべて抑えました。その

 ため、もし応援が来るとしても、2~3時間は

 必要です。シャトル到着から脱出まで、最悪でも

 1時間以内で済ませる計画です」


つまりこうだ、

まだ特定されていないある国による要人暗殺のための

アンドロイド部隊が作られようとしていると。

今回はそれをできる限り妨害して時間稼ぎをすると。


でも、どうやらこのトムという軍人は、任務に参加する

3名を見て生還可能性が薄いと感じているらしい。

高額の生命保険をかけたうえでの自殺行為とでも

思っているらしい。


遺族補償の話が丁寧すぎる。


ま、おそらく我々がシントウケイで本気でターゲットを

つぶしにいこうと思っていることなど知らないのだろう。

なんと言っても主力はこの、あくびしながら聞いている

金髪の女の子だからな。


「今回はキサラギ本社の協力も得ています。ええ、その

 民間工場はキサラギ直系ではないですよ」

「社外秘となっている機体の弱点も出してくれました。

 胸部から腹部内奥に制御装置がありますが、ある

 周波数で振動を与えると、基盤の電源系のデバイスが

 破損する可能性があるとのこと、あたりどころが

 悪ければ停止する可能性があるそうですね」


そうだよ。そこをシントウケイで狙うんだよ。

400体以上のジェニー型すべてのあたりどころを狙う

など何年かかろうが、無理だ、しかもこの三人で、

トムの顔がそう言っていた。


妻という外堀が埋められている時点でこの

話から逃げられそうになかったが、

絶対生きて帰ってやる。


そう、それにおれには、サキの仇をとるという

テーマもあった。少女を残して逃げ出したおれ。


「今回はあたしも参加するよ」打ち合わせ途中で

入ってきたのは化粧のけばいおばさん?えっと、エマ?

いや、エマは最初からこの打ち合わせに参加している。

それにひと回りごつい、誰?

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