第5話 山根さん

 僕のクラスの山根さんが、元気でなくなってから、三ヶ月がたった。

 山根さんは、明るくて、クラスのムードメーカーだったから、みんなはじめはすごく心配したけど、だんだん山根さんが中心にいない教室に慣れてしまった。

 「山根さん、僕、図書室にいくけど一緒に行かない?」

「水野くん?」

山根さんは、僕を見上げた。やっぱり山根さんは、前を見てるのがいい。

「なんで?」

「つまらなそうだから。」

「いいよ。」

彼女は本当に僕に興味ないんだなぁ、と思いながら僕は、図書カードを手に取った。

 「ねぇ、山根さんなんか変わったよね?」

僕が、山根さんを見ると山根さんは本から目を上げないまま溜め息をついた。

「もう、元気でいる意味ないからね。」

彼女はパタンと本を閉じた。

「飛行機事故、あったの覚えてる?あれ。私の、好きな人が乗ってたの。高校生。」

僕は、山根さんにかける言葉を見つけられなかった。

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