間話 現代の世界にて 2 ですか?

 俺の名前は前田一也。こう見えても都内では有名な高校に通う17歳だ。


 でも、悩み多き17歳だ。

 え? ちまたの17歳は皆悩み多いだって? 


 ・・・まぁ、そりゃそうだな。


 ただ、待て落ち着け。俺の話を聞いてくれ。

 最近俺は、いや。俺達が正解か。俺の彼女のメグ・・・。朝倉 恵も同じ事が起こっている。最近俺達2人は頻繁に夢を見るのだ。


『夢なんて誰だって見るだろ!? くっだらねー。』と、思ったあんた。


 合ってる。

 そう言われちゃったら俺何にも言えない。でも、聞いてくれ。俺達が見てる夢の話を・・・・。


 夏休みの最中、メグが激しい気持ちの落ち込みによって引きこもった時期があった。休み明けも学校を休みそうだったが、彼女を救ってくれたのはとある夢だった。


「はよー。カズ。またあの夢見た・・・。」

「はよー。メグ。俺もだ。何でこう毎日、毎日見るんだ?」

「分かんない・・・。あっ、でも私2人目も見るんだ。」

「え”? 2人目?」


 ココ最近の毎朝の会話だ。

 お互いに同じ世界の登場人物が出る夢を見ていた。

 俺の配役は【イッセイ】という貴族の子供で鍛えすぎたせいで尋常じゃない体力を持っているがチートとまではいかない。魔法が使えないし、魔術のコントロールもまだ下手という。よくわからない男の子が主人公だ。

 そして、メグが見ているのはそのイッセイを好きな女の子が主人公になる夢を見ている。


 いつもは、ソフィアという女の子の夢だが・・・。


「なんかね。エルフの女の子でね。今はお母さんを探してるのかな? 護衛2人と一緒に行方不明のお母さんを探してるんだ~。」


 楽しそうに話すメグ。俺も話を合わせる。


「なに? そうなの。良いな~。俺なんて【イッセイ】の夢ばかりだ。今回は世界樹って所に行ってたし、この前なんて奴隷の村とか、何とかの谷に連れて行かれてた。」

「えー。そっちのほうが良いじゃん。ソフィアなんて城から出ないでウジウジしてるからあの子・・・にそっくりなんだよね~。」


 ソフィアと言う女の子はイッセイを好いているとのことだが、イッセイはどうなんだろう? 好きとかでは無いな。どちらかと言うと妹愛的な感じに近い気がする。


「そうなん? イッセイはソフィーの事、妹かなにかだと思ってるぜ。で、『あの子』ってだれ?」

「え? 私『あの子』なんて言った?」

「言った、言った。」

「聞き間違いじゃない? それより聞いてよ。2人目の話を。」


 と、言うやり取りが続く毎日。

 メグは毎回『あの子』と言うが誰のことなのかサッパリだ。

 だが今日は新情報。2人目の情報である。


「今日はエリンシアっていうエルフの子が私の夢の主人公だった。すごくおっちょこちょいでね。」

「あれ? その子なら知ってるな・・・。俺の夢のイッセイでも会ってるぜ。」

「あっ、そうなの? 私、2人分見てるから進行遅いのかな? イッセイ君に会ってないよ。って、学校に着いちゃった。」

「あぁ。また、帰りにでも一緒に話しながら帰ろうぜ。」


 既に慣れたもので俺はイッセイと同じく登場人物を愛称で呼んでいた。逆にメグもイッセイの事は君付けで呼んでおりそれも登場人物と同じだった。

 見知らぬ世界の冒険譚なんて夢で見る分にはすごく面白いのだが、内容が濃い夢なだけにいざ2人分ってなるとなかなか重たい気がする。


 メグが大丈夫か非常に心配だった。


 その後、学校も終わり下校時刻になった。


「はぁ・・・。もうすぐ季節が変わるね。」

「何だよヤブから棒に。」

「私、この17歳っていう時期を凄く楽しみにしてたの。大人と子供の狭間のこの時間を・・・。」


 メグは17歳という時期を大事にしていた。一生に一度の17歳。

 遊び尽くして、後悔が残らないようにするんだ。それが彼女の口癖だった。


 それを誰かに言っていた気がする・・・・。


 --チリッ・・・。


 今一瞬頭の中で夕暮れに学園の隅に集まる4人のシルエットが写った・・・。


「!?」

「どうしたの?」

「いや。何でも無い。でも、教室に何かある気がする。ちょっと行ってくるよ・・・。」

「え? 待って私も行くよ・・・。」


 --ガララ・・・。


 教室の扉を開けると丁度夕暮れの茜色が教室に差し込んできていた。

 眩しい西日に目が眩む。腕で隠して教室を見渡す。


「ハァハァ・・・。カズ足速いよ・・・。」

「わりい。でも、間に合ったみたいだ。」


 --チリ・・・・ビリビリ・・・。


 教室に紫の光の塊が出来たかと思うと一瞬で消えた。


「何? 今の?」

「わからない・・・。」


 俺は消えた光の玉の方へと歩いていく。


「だ、大丈夫なの?」

「あぁ。多分・・・。」


 教室の隅の空きの机。その上に出来た光の玉跡地には白いストローハットが置かれていた。


「・・・これ。」


 俺は、そのストローハットを拾うとメグに見せた。

 俺からストローハットを受け取るとメグは抱きしめて大泣きし始める。


「え、英梨奈・・・・。」


 メグは女の子の名前を呼んで泣き始めた。

 英梨奈・・・・・・!!? 思い出した。何で忘れてた? 鏡 英梨奈の事を。

 それと、一生!? アイツはどこだ?


 急に思い出した親友の名前に驚き戸惑っていた。

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