81話 力不足の理由とバロウさんの正体ですか?
「さて、何故ベネッタ様がこの様なお戯れを?」
そもそも、初級の魔法しか使わないのがおかしいのだ。
彼女は宮廷魔術師を目指していた程の実力者。
加護でもかなり有利なやつを手に入れていた筈だが?
俺の問いかけに困った顔を向けるバロウさん。
「さっぱり分かりません。」
バロウさんは、首を振るばかりだった。
「お嬢様があの様に魔法の威力が弱くなったのは、つい先日の事です。王都より北に向かった先に『ドラゴンの墓場』と呼ばれる場所にて魔導実験をしておりました。ヒューマンノットリザードやドロンと言ってもご存知ありませんよね?」
「あっ、いや両方知っています。」
昨年春の1ヶ月のキャンプを思い出した。
ヒューマンノットリザードはトカゲ人間だし、ドロンと言うのは宙に浮いた大きい面玉のモンスターで触手を振り回しながら襲いかかってくる。目からビームを出す癖にそのビームで自分にもダメージが入るアホなやつだ。
「貴方様は・・・?」
バロウさんが驚いた顔で俺を見てくるが取り敢えず今はいいだろう。
「で、その雑魚との戦いの中、ベネッタ様に変化が起こったと?」
「ざ、雑魚!?「しぃー。」あっ、す、すいません。・・・そうです。その頃のお嬢様の魔力は中級魔法ならほぼ全種類使えることが出来ました。」
「ほぅー。それはなかなかですね。」
「もう、いちいち驚きはしませんがそうです。で、お嬢様が魔法を放とうとしたその時に魔法が出なかったのです。」
著しい能力低下。はてさて何が原因だ?
「魔力切れ・・・では無さそうですね。」
「はい・・・。」
先程、ここに来るまでスライム相手に何発も休まず撃っていたから魔力量自体は減ってないのだろう。だが威力は落ちた。
思い当たるっことが1個だけあったが、もしかするとこうなるのかも・・・。
しかし、なんの前触れもなく
ベネッタ嬢不貞腐れの理由もこれで分かった。
理由は、彼女の
恐らくこの前殺されたベルゼブブの加護を沢山持っていたのだと思われる。
なにせ、◯玉様からは「あの死んだベルゼブブって奴は
これを聞いた時、『神って終わってるな~。』と、思ったもんだ。
「それからと言うものお嬢様はこの様な雑魚との調整を強いられているのです。」
ヨヨヨっとハンカチで涙を拭うバロウさん。
なるほど。そう言うことか・・・。
「バロウさん。これから起こる事は他言無用でお願いします。」
「はい。」
力強く頷くバロウさん。
「バッカス、おいで。」
「呼んだかイッセイ。」
俺の呼び声に合わせて姿を現したのは土の精霊バッカス。
何かあれば彼に頼るのが俺の中でデフォルトになっている。
精霊を見たのが初めてなのかバロウさんは驚き戸惑っていた。
「なっ!? モガッ「しぃー。」(コクコク)」
「イッセイ。面倒だ他の騎士達は眠らせられんか?」
「そうしよっか。」
腰に付いている袋から取り出しだのは、魔術の入った石【魔術石】だ。
様々な効果が封じ込められている。
その中から今使いたい物を・・・。
−−ポイポイ。
少し離れた場所に居る騎士さん達の方へ2~3個の魔術石を放り投げる。
カズハとマーリーンとアクアのちからを込めて作ったスペシャルブレンドだ。
いい夢の見れる魔導石『
その名の通りいい夢が見れるだろう。
着弾と同時に発生した水煙に巻かれた騎士さん達。
最初は「敵襲か」「お嬢様を守れ」等と騒いでいたが、モノの数秒で静かになった。
「ちょっと。皆どうしたの? ねぇ、返事してよ。ねぇ。嘘でしょ? ねぇ!! ねぇー。」
若干1人は対象外なので眠らない。
なので目の前で急に起きた事象に付いていけず焦っていた。
「ふむ。良いじゃろう。あのお嬢さんを視れば良いんじゃな?」
「うん。急に魔法が使えなくなったみたい。だから理由が、知りたくて。」
「相変わらずお主は珍妙な事象に出くわすなぁ。」
「えっ、僕のせい?」
「そうは言っておらん。じゃがこんな事象、聞いたことがないのも事実じゃ。初めましてかの、お嬢さん。」
「だ、誰? って、精霊!?」
「ほほう。一発で見抜くとはなかなかの目じゃな。」
バッカスのカウンセリングが始まったみたいなので、俺は眠らせた騎士さん達の護衛に入っている。
カズハの力をふんだんに使った魔術石。それを地面に数個等間隔で埋めていく。
カズハの力は結界や呪い解除などに使えるのでとても重宝出来る。
・・・こんなもんで良いか。
ヒューマンノットリザードくらいまでならこれで大丈夫だ。
手に付いた土を払いながら結界の出来を見ていた。
大きいクリスタルのような輝きを放つ結界。
この辺のモンスターが1クラスで倒せることを考えれば十分な強度だと言える。
「イッセイ様。少し宜しいですか?」
「何ですか? バロウさん。」
結界を貼った俺に向かってくるバロウさん。ま、来ると思ってたけど割と遅かったね。
「教えていただける範囲で結構です。イッセイ様は何者ですか? お嬢様と同じ年でここまでの戦闘力と知識。挙げ句の果に精霊を駆使するなど普通では考えられません。今から冒険者を始めても4〜5クラスは行けるでしょう。いやもっとかも・・・何れにしても今この場にいるレベルから逸脱しています。」
"ハァハァ"と肩で息をしているバロウさん。まぁ、これでも飲んで落ち着きなさい。
渡したのは、バッカスの力を借りて創ったグラスにアクア特製の水を注ぐ。
バロウさんは俺の一連の行動を見て膝を付き。
「おぉ。神よ。何という奇跡でしょうか。」
と言いながら俺に向かって膝をおり涙を流して手を組んでいた。
まるで、俺に祈るような形だ。
何でだよ!!
迷惑極まりないバロウさんの説得が大変だった。
・・・
「取り乱して申し訳ございません。イッセイ
俺に対して敬語が滑らかになったバロウさん。取り敢えずは落ち着いてくれたようだ。
「はぁ、まぁ。取り敢えず落ち着いて頂けたのなら助かります。皆もおいで。」
俺は精霊の皆に声を掛ける。
"わー" "わー""わー""わー""わー"
ワラワラと出てきたのはちびっ子化した精霊5人だ。
プロメテ以外のチミっ娘3人組は俺の膝目掛けて猛ダッシュし、若干1名は俺の頭の上を目掛けて背中をよじ登っていた。
「イッセイ様・・・。そ、それは?」
「イッセイは女子の面倒で忙しいから
優等生(小型)のプロメテが率先して仕切っているが、バロウさんは固まっていた。
「あのな、プロメテ。いきなり話しかけてもビックリするだろ。いつも挨拶が先だと教えてるじゃないか?」
「ふん。イッセイの癖にボクにお説教か?」
「悪い子はお家に帰すぞ。」
「ゔっ。わ、分かったよ。」
「ボクはプロメテ。炎の精霊だ。イッセイの膝の上に居るのが、左から青髪がアクア。緑の髪がセティ。金髪がカズハだ。」
「「「よろしく(です・ですわ)」」」
「で、イッセイの頭でマッタリしてるのがマーリーンだ。」
「おいっす〜。」
「か、か・・・」
「かか? って、うわっ!!」
「可愛い〜。」
バロウさんはネコナデ声を出してプロメテをキャッチするとそのまま胸元に抱いていた。
あいつ調子いいからすぐ捕まるんだよな。
それよりもバロウさんがこうも小さい物好きだったとは・・・
「やめろー。俺は女が嫌いなんだ。」
はぁ? 誰が女だって?
「えぇー。プロメテくん。お姉さんとお風呂入ろうよ。」
「お前馬鹿だろ? 炎の精霊に水分進めるとか絶対馬鹿だろ。いや、ボクの事殺そうとしてるだろ?」
「そんなこと無いよー。私、君と暮らしたい。」
バロウサンデシター
「なんの騒ぎ?」
バロウ×プロメテ(ショタ)と言う人間と精霊ショタと言う新ジャンルが生まれそうだったので静観していたのだが、ベネッタ嬢がバッカスを抱いてこちらに来ていた。
「あっ、いや。」
「はぁー。バッカスから聞いたけどほんっとうに君って精霊をこんなに従えているのね。」
膝の上で楽しそうに遊ぶ3人と頭の上でマッタリしている1人を上下に見ながらベネッタ嬢は呆れた顔をしてきた。
「はははは・・・。」
「で、私と精霊を会わせたのも
おぉ。流石。宮廷魔導師を目指すだけの事はある。
まぁ、バッカスが説明してくれた可能性も否めないんだけどさ。
そう。俺はバッカスを使ってベネッタ嬢に精霊召喚の適正があるかを探って貰ったのだ。と言っても全く可能性が無い人に会わせてもしょうがないのでベネッタ嬢の人となりを見てから動いたけどね。
バッカスが見てるのは彼女と相性の良い属性を見てもらってた訳だ。
「やっぱり一番は火の属性かのう、後は風と月がいいと思うんじゃが。」
意外と多いな。
てっきり炎一択だと思っていたんだけど。でもまぁ、
「良いじゃない。良いじゃない。それじゃ、始めようか。」
俺の掛け声でカズハ、セティ、プロメテの3人が1/8位の大きさになりリサイズされる。
「あー。イッセイの膝の上楽しかった。」
「セティ。次回は私が真ん中ですよ。」
「えー。早いもんがちでしょう。」
「それだと貴女早すぎるから絶対ダメ!!」
「がはは。うむ。ならば拳同士のぶつけ合いで決着「「却下」」」
よし。皆普段通りに戻ったな。
バロウさんが固まっている、ショックなのだろう。
だが、これがプロメテの本性なので仕方がない。
時間が解決してくれるだろう。(呆れる方向で)
「カッコいい・・・」
と、思ったがバロウさんは顔を赤らめた。
ベネッタ嬢以外の皆がバロウさんを見る。
皆が引きつった顔をしている。
「がはは。女。今度、オレと筋トレしよう。」
「はい。プロメテ様。」
目にハートマークを作りプロメテにベッタリのバロウさん。特殊な人だったらしい。
「で、こんなに高位の精霊を呼んで私に何をしてくれるの?」
冷静なベネッタ嬢は話を先に進めた。
ありがたい。ショックで目的を失いかけてた。
「え? あぁ、今からこの3人を媒介して精霊召喚の儀式を行います。」
「私、これはいらないわ。」
調子に乗ってポージングを決めているプロメテを指差す。
サイド・チェストが暑苦しい。
「きゃああ、プロメテ様。キレてます、キレてますよ。」
バロウさんがうるさい。
「あー。あれはうち特有のだから大丈夫。あれ以下はいないと思うよ。」
「・・・そう。」
ベネッタ嬢はさり気なく俺の後ろに隠れてきた。
プロメテ熱が暑かったのだろう。生理的に受け付けてない感じだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます