79話 小説のような展開ですか?
「ふぅー。金◯のヤツ絶対また
意識はお祈りに来た教会に戻る。
あの世界から半場強制で戻された。お蔭で意識が若干朦朧としている。
話の最後に
迎撃出来る方法を考えておこう・・・。屋敷の門に近づいたらBANだ。
朦朧とする意識の中、目の前には数名の神官さん達が立っているのが見えた。
彼等は俺がお祈りを終えると、必ず司祭クラスの人が涙を流しながら頭を下げてくる。いい加減慣れたけど、流石に鬱陶しい事この上ない。
まぁ、職業柄こう言う人達は常に神の声を欲しているので、話の断片でも
なので、あの手この手を使ってあちらの世界で何を話したのか探りを入れてくる。
まるで、新聞記者や報道の人達みたいに直ぐに囲んでくる。
中にはカミングアウト出来ないネタもあるので色々話をしてこないとリークが難しい。変にコメントすると着色が付いて湾曲したまま全拠点に配布されてしまうからだ。
手を振って立ち去る位が丁度いい。いつもはそうしているのだが・・・
今回はふと思ったことがある。
「王都魔導研究所について知っている人が居ませんか?」
その言葉を聞いてあからさまに皆は難しい顔をした。
魔導研究所とは、その名の通り魔導や魔法を研究しており過去の文献や伝記なども数多く保持している機関である。
あだ名では、『王都魔導図書館』とか言われているが、それは皮肉交じりの揶揄表現である。遺物を一切一般公開せず、飾られているとの噂からきているあだ名だが。
しかも、残念なのは魔導に関わる者しか入れない。
あくまで一般的にはだが・・・。
まぁ、魔法が使えない俺が近寄れば一瞬で門前払いになり、お清めの塩を撒かれるのがオチだ。だからと言って忍び込むには警備が厳重で骨が折れるため苦戦の割に合わない。(バレたら一発でゲームオーバーだし、やり直しが効かない。)
ゲームとか小説ならこの後直ぐにイベントが発生して入り込む術が見つかったりするのだが・・・むぅ。
と、言うことで付いてくれた神官さんに図書館に入り込む方法を聞きながら歩いていた。
「
「デスヨネー。」
超現実主義者に精神論や神聖論を説いた所で理解される筈がない。
その人にとっては、目に見える結果や現実が全ての世界なのだから。
ま、どちらかと言うと敵どうしだしな。
そうなると姉様に相談か・・・。迷惑かけちゃうよな。
取り敢えず姉様のもとに帰ろうとしたのだが出口付近で詰まっていた。
相変わらず混んでいる場所だ。と、思う。
ここは、王都一の大きさを誇る教会で参拝者や巡礼者など人が絶えず訪れるためいつも賑わっているのだが、今日はいつもとちょっと違う空気が出来ていた。
出口付近にちょっとした人だかりが出来ていたのだ。
誰か有名人でも来ているのかもしれない。
仮に教会関係者なら面倒なことになるのは
だが、そうは問屋がおろさない。
「イッセイ君。こんな所で何してるの?」
その人だかりから声がした。しかも、俺を知っている人からだ。
と、言っても今の俺は身長が150cm台しか無いため人だかりに居るのが誰なのか判別が付きにくい。
足を止めると人だかりから女の子が出てきた。
「久しぶりね。色々聞いてるけど大変だったわね。」
腰に手を当てて、オレンジ色のツインテールをピコピコ揺らしている女の子が現れた。
イッセイは誰だか分からず戸惑っている。
相手の女の子の口撃。威圧がすごい。
一瞬の流れがこんな感じだった。内心こう言う人の考えが理解出来ない。
こんなに威圧してくるなら何で話しかけてきたんだ?
だが、その時ある事を思い出した。
記憶の片隅を探ると5歳の洗礼の儀式の時この教会で同じ様な出会いをした記憶だった。
アホの貴族の子供3人に絡まれるキッカケになった人物の片割れの事を。
確かこんな感じの人で名前は・・・ベネッセさん?
あれ? なんか違う気がするがまぁいいか。
俺は、うろ覚えの彼女にそのまま聞いてみることにした。
「えぇーっと、ベネッセ・・・様?」
「何? 貴方私の事忘れたの? 私の名前はベネッタ。ベネッタ=リ=ガートランドよ。貴方以外に物覚え悪いのね?」
おっと失礼。
キツイ目をした少女は自分の名前を訂正をしてきた。
彼女は俺が名前を忘れたと思っている様だが、彼女は勘違いしている。
忘れたのではない、端っから興味が無かっただけだ。
「すいません。長く王都を離れて居たので貴族のご子息のお名前は確認中でして・・・・。以後気をつけます。」
「イッセイ君の話は聞いてるよ。何でも遭難していたらしいじゃない。気を付けないとダメよ。でも、冒険者と旅が出来るなんて結構羨ましい話よね。私達なんて家の外に出るにも護衛が付いてきて自由なんて無いんだもの。」
諭すように俺に注意を促してくるベネッタ嬢。
俺と叔父さんが北の大地から冒険してきたことは国にとってはトップシークレットな内容なため。一部の人以外には俺は遊んでいた山で盗賊に襲われ。
少々強引な言い訳に聞こえなくないが、この世界に人攫いなども多いため父様と母様の監督不行届という事で処理されていた。
「すいません。気をつけます・・・。」
はぁ。この不毛なやり取りはいつまで続くのだろうか?
折角鏡の情報を入手出来たので少しでも早く整理したい。俺には魔導図書館に入り込む方法を考える必要があるのだ。
答えの出ない考え込みに若干イライラし始めていた、ベネッタ嬢を取り囲んでいた騎士が話しかけてきた。
「お嬢様。そろそろご出立のお時間ですが、いかが致しますか?」
「あぁ、そうね・・・。あっ、良いことを思いついたわ!! 彼も同行させましょう。」
”パン”と柏手を打って勝手に良い判断だと勘違いするベネッタ嬢。
俺からすれば迷惑以外何者でもない言葉を口にする。
ベネッタ嬢の思いつきに騎士さんも困った声をだす。
「は、はぁ。ですが・・・。」
「何ですか? 私の言葉が聞こえなかったのですか?」
「い、いえ。了解しました。」
ベネッタ嬢に睨まれて顔を青くする騎士さん。直ぐに仲間の元へと走って行きそうになる。
あー。パワハラだ。
ブラックな企業にありそうだなと思いつつ。
ベネッタ嬢の提案は俺は何も聞いていないし、付き合う気も無い。
なので騎士さんにもストップをかける。
「待った!! 何の話ですか? 僕は何も聞いてません。」
単純に俺の声にビビったベネッタ嬢と
遠くに離れている騎士さん達も俺の
賑わいを見せていた教会の空気が一瞬で張り詰めた。
「大声を出してすいません。一度ご説明願えますか? 事と次第によっては僕は同行する訳にいきませんので。」
突然の大声に怒ったベネッタ嬢が俺を睨みながら俺を咎める。騎士さんもハッと我にかえった。
「何をそんなに大声を出すのよ。ここは教会よ。」
「それは分かります。ですが、僕にも話をしてください。」
「しょうがないわね。バロウ話してあげて。」
「お嬢様よろしいのですか?」
「早く話して。」
俺の大声に怒り心頭のベネッタ嬢。騎士さんにあたったのは申し訳無いが話を聞こう。
釈然としない顔をしたバロウと呼ばれた騎士さんが説明してくれた。スラッとした長身にピッとした姿勢。兜から見える鋭い眼光が出来る男だと想像させる。ハスキーボイスがまた良いね。さぞ女性にモテることだろう。
線が細く見えるのが騎士っぽくないが、いやいやそこはいかにもスピードタイプですと言わんとする所だろうか。
こりゃ。新しいタイプのイケメンだな。
「はっ。ベネッタ様の魔法研究のため近くの森にてモンスター狩りに行く予定です。」
なるほど。で、俺がそこに同行する意味は何かあるのか?
イマイチ、ピンと来ない俺にベネッタ嬢が付け加える。
「君が貴族としてありえない失態を犯したから名誉挽回のチャンスを作ってあげるのよ。私の護衛としてね。どう、学校でも地位を取り戻せるしいい方法でしょ。」
なるほど、俺を気に掛けてくれての行動か・・・。
「だから、貴方も付いてきなさい。ただ立っているだけで名誉が回復出来るなら都合が良いでしょ。」
正直、断る方法を色々考えていた。
俺の名誉なんて特に価値のある話でも無いし、そもそも落ちてない。
それに遠くの騎士さん達が、「おい。護衛対象が増えるみたいだけど大丈夫かよ。」「お嬢の気まぐれかよ参ったな。」などと否定的な声も聞こえてくる。
そりゃそうだ。命を懸けて他所ん家の子供の面倒まで見る義理は無い。むしろちょっとでもへそを曲げられて後々問題になる方が嫌だ。
色々考えたが断ろう。
俺1人が悪者になれば良いだけの話だ。
「すいま・・・・。」
「そうだ、受けてくれたら魔導図書館に入れてあげるわ。さっきそこの話をしてたでしょ?」
「僕を忠実な下僕とお呼びください。ベネッタお嬢様。」
思ってもいない提案が舞い込んできた。
直ぐにフラグ回収出来るファンタジーって最高!!
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