78話 聞いた話は良いことだけだったのですか?
"やぁ。よく来たね。"
よく来たね。じゃない。散々シカトしてたくせに!!
"シカト? 人聞きが悪いな〜。こう見えても僕は忙しいんだよ。それに君のために色々聞いて回った結果だから良かったと思うけどね。"
相変わらず軽い奴だ。
"何か言ったかい?"
・・・いいえ。何も。それよりも今後は
”あれ?”
そいつは、
「メッセージを受信しました。メッセージを受信しました。メッセージを・・・・・」
門に顔をぶつけながら、瞬きもせずにずっとそう呟き続けていた。
幸い金○様の使いと分かったので俺が対処したのだが、屋敷で働く召使いの人や近隣の方々はちょっと怯えていた。
人の家の門の前で顔をくっつけながら呪文を繰り返す人は気持ち悪いから止めてください。
"えぇー。
ダメです。あんなのがちょいちょいウロウロしてたら、その内あそこに住めなくなるから止めてください。
"ちぇ。折角外界の情報を探るチャンスだったのにな〜。"
それよりも本題が。
"あ、はいはい。君が聞きたいのは鏡って女の子の事だろ?"
流石知ってましたか、いや知ってないとおかしい。
先日、エリーが見つけた小屋で『日記』を見た俺は金○様に確認したいことがあって謁見を希望していた。
だが、実際は会えなかった。
そのため、この金○野郎はなにか言えない事情があって俺から逃げ回っていた。と過程している。
"ひっどい言い方だね。"
ちなみにこの世界は思ったことは筒抜けになる。
だから隠し事をしても意味はない。ある意味裏表無い場所だ。
だから単刀直入に聞く。
そうさ。俺が聞きたいのは鏡の事だ。何故彼女は、500年前に行った?
日記の内容が本当ならが俺がこの世界に来た意味すら無くなる。
鏡が居ない世界なら外来種とやらもどうでも良いんだぜ。
"物騒な事考えるね。と言っても僕も今回の件は些か腹が立っているんだ。"
珍しく強い口調の金○様は俺以上に怒っているらしい。
赤く点滅しているのがそう言う理由なのだろう。
"本当の事を言えばもっと早く君に会う予定ではあったんだ。だけどちょっと問題が起こっていてね・・・。"
はぁ、問題ね。証拠の隠蔽かな?
"違うよ。どうやら、既に外来種がこの世界に来ている。"
何!? この前、外来種の手下みたいな奴を倒していたけど他にも居たってのか? って言ってもどうでもいいか。鏡の話とどう関係がある?
"まぁ、待ってよ。順々に話をしないと整理もつかないでしょ。話を戻すと外来種がどの位居るとか、どういう奴が居るとか細かい詳細は分からないね。なにせ今回奴らは巧妙かつより戦略的に動いている。それでね問題というのが、地底の国を導いていた神の1人殺された。"
!!? なん・・・だと・・・。
"それでね。事実確認やら対応やらで皆が出払っていてね。ガブリエルとウリエルもそっちに行っている。"
金○はブルブル震えていた。
あっ、あんまり小刻みに動かないでビジュアル的に【Z】指定になっちゃうから。
・・・もしかして、不機嫌なのってガブリエル様が居ないからか? い、いや。それよりも神って死ぬのか?
金○様の話は色々マズイ。
教会辺りが聞いたら発狂して教皇あたりが不思議な小踊りをしそうなレベルだ。
そして、更にマズイ話が・・・
"普通に死ぬよ。"
てな感じで軽く宣言される。
望んで無いのにカミングアウトされた!? でも、神って死ぬのか・・・
"そう。神って言っても『存在』だからね。何だって傷つく方法が見つかれば後は簡単だろう?"
ま、まぁ。そう割り切ればな。でも、傷付けられなければ同じことだろ?
この世界の生物が神を傷つけられないのだから・・・
"いいや。外来種なら直接傷つけられるよ。ただ、その場合神1人に勝つために外来種は100人単位で襲いかかって来ないとまず倒せないだろうね。""
なんだ、それなら特に問題無さそうだな・・・。
"それがね・・・。そう簡単でも無いんだ。神はこの世界に住む
それは、知ってる。神には触れる事も出来ない。
そもそも会うことだって出来ないだろ。
"それがね、例外があるんだ。その場合、『神具』が必要になるんだ。"
しかし、神具ってのは・・・。
"うん。神々が外来種の神にダメージを与えるために作り上げた武具だね。"
でも回収したんだろ?
"いや、数は少ないけどこの世界に神具って結構残ってるからね〜。"
残ってるんかーい。
"それもこれも500年前の大戦の後始末が曖昧だった
な、なるほど・・って、鏡の話は何処に行った?
"ととと、そうだった。君話上手だから誘導されちゃったよ。"
俺 の せ い か よ ! ?
"うわっ、めっちゃ怒ってる。冗談なのに。ププッ。"
無言のまま金○を鷲掴みする。
ギリギリ音がしていたがこのまま潰してやろうかな・・・。
"いだい、いだい。わかった、分かったよ。言う言う。彼女は転生してるよ。間違いなくしてる。言ったから離して〜。って、力入ってる! 入ってるよー!!"
金○様が後半は何を叫んでいるのか全く耳には入らなかった。
鏡が転生してる? マジか。
嬉しさのあまり手に力が入る。
お
"止めてー。僕の○○潰れちゃう〜。潰れちゃうよー。"
その後、気付くのに5分ほど要した。
・・・
"フゥー。助かった。もうすぐ中身が出ちゃう所だったよ。どうするんだよ。中身が出ちゃったら。こう言うのって中身が出たら負けなんだよ。"
なんだよ負けって・・・。普通、中に○○なんて居ないとか言うんじゃないのか?
"ふふっ。最近のキッズは賢いっからね。中身があっても知らん顔してくれるのさ。大人より大人だよね。"
なんの話だよ。で、鏡はこの時代に居ると?
"そうだね。召喚と言う形で過去に送られていたみたいだけど、彼女が聖剣を手にしていたのは幸いだったね。聖剣の魂の導きに比例して彼女の精神もこの時代に居るみたい・・・。"
か、感じるのですか!!!
食い気味に近寄って行ったが金○様は速攻逃げていった。あっ、大分警戒されてる!?
それに、折れた聖剣って、日記に書いてあったあの折れた聖剣の事?
首をかしげた俺に金○様がフヨフヨ近寄ってきた。俺の頭の上に着地すると。
"そうそう、そうだよ。君の彼女の使っていた聖剣は使用者と魂で結びつけ他の物が力を使えない様に制御する性質を持っているからね。彼女との契約を解除されていないので聖剣が彼女を転生させている。"
!? マジですか!
"マジです。折れた聖剣は持ち主を失ってヴィルグランデと同じく違う形になっている可能性があると思うけど。聖剣の力は感じるね。"
じゃあ。
"そうだね。折れた聖剣を探す。これが次の目標だ何だけど・・・何処にあるか僕は知らない。"
ガクッ。 人を乗せておいて綺麗にハシゴを外す奴だ。
いや。まぁ、鏡がこの世界に居るっていう事がわかっただけでもテンションが上がる。正直ここの所あんまり真面目に生きて無かったんだよね。
取り敢えず目の前の事をこなしていくだけの日々だったからな。
"いやね。さっきも言ったとおり神が殺されたからね。他の神に聞こうにも取り付く島も無くてね・・・。みんな忙しいみたいなんだよ。"
確かにそう言っていた。そう言えば神の加護を失った国は何か影響があるのだろうか?
"いい質問だね。神の加護を失った国は単純に力を失う。"
力?
"そう。簡単に言えば【勇者】の力。"
な、何だと!?
"と、言っても全員じゃない。今回、殺されたのが【ベルゼブブ】と言う神だ。"
確か地下世界を統べる神々の中心だったと記憶している。ハト派の神で子である種族を全部愛してると神託しているそうな。ガブリエル様とウリエル様がそういうのは思ってても口にしないんだけどね-。って白い目で言ってたっけ。
"その変じ・・・彼が死んだ。紳士的な奴だったんだけどね。まぁ、彼が死んだ事で彼から加護を受けた勇者は・・・"
・・・力を失うと?
"まぁ、弱まると言うのが正解だけど、そういう事。ただ、どの様に失うかは僕も知らない。"
何だよそれ。
"今までに無い事だからね。世代交代は合っても殺される事は無かった。実際に何が起こるかは僕だけじゃなくて皆知らないって事さ。"
ふーん。あんた等でも知らない事って有るんだな。
"神を買いかぶり過ぎだね。案外何も知らないよ。"
威張ることじゃ無くない? まぁでもなんだ。さっきは怒って悪かった。
"どうしたの? 急に。"
いやー。あんたの事疑って・・・その・・・。悪かったよ。
"あぁ、その事。まぁ、しょうが無いよね。僕だって最愛の人がこの世に居ないって聞いたら発狂するよ。それに僕の1番の糧は覚悟だからね。どんな感情でも覚悟が聞ければ最高かな。"
そうか、そう言ってもらえると助かるよ。
"ふふっ。また何かあれば来なよ。ウリエルが会いたがってるから。"
"ふふっ。そうしてやってくれる。取り敢えずはガブリエル国には【王都魔導研究所】って所があるからね。まずはそこを目指すのが良いよ。"
【王都魔導研究所】か・・・。わかった、なにか分かったらまた来ますよ。
それと、【あれ】は使用禁止ですからね。
"あーはいはい。じゃあまたね。"
絶対使う気だろ!! せめて動物にしてくれ。たの・・・。
-プツン。
意識はその世界から遠退いていった。
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