13話 5歳になりました。
イッセイです。5歳になりました。
只今、王都に向かう為、父様、母様と共に馬車に乗っている最中であります。
理由は王都ヘ向かうため。
この国では貴族の子供が5歳になると、
・洗礼の儀式を受ける。
・学園に入学する。
2大イベントが控えている為、王都へと行く必要があるのだ。
洗礼の儀式は近くの教会でも受けれるのだが、貴族は学園に入学する為の顔合わせも兼ねて王都の大聖堂にて行うのが通例となっていたりする。
今はその日程に間に合うよう知り合いの貴族領に寄ったり。
上級貴族(シェルバルト家の親)に挨拶を済ませたりと寄り道をしながら移動中である。
2週間の旅も出発すればアッと言う間だ。
色々あったが各方面への挨拶も無事に終了し後は王都へ向かうだけとなっていた。
そう言えば、フェニキス領に寄らなかったけど、もう良いのかな?
女王陛下の故郷の事を考えていたら父様が話しかけてきた。
「向こうの家に着いたら。カレンがお前を離さないかもな」
父様は俺の頭を撫でながらそう言った。
王都に居る姉様も既に七歳。最近では色々大人しくなって……大人びてきたそうなので、今から会うのが楽しみだ。
昔から俺をおもちゃにする所があって、正直、苦手意識しかない…。
まぁ、色々あったとしても近くに居れるならそれはそれで良い事だと思う。
「イッセイ。見えて来たぞ。あれが王城だ」
父様の声を聞いて馬車から身を乗り出す。
山岳の切れ目から王都の都が一望できた。
「うわー」
すっげー景色。
結構離れているので、民家等は当然ミニチュアサイズだ。
だが、お城は白を基調とした色で大きいためここから見ても形がハッキリと分かる。
○グラダ・ファミリアみたいだぁ。もしくは、町の真ん中にある◯ン・サン・ミッシェル的な。何れにせよ神々しさすら感じる。
そんな王都を右手にみて山道を下っていく。
「イッセイは王都に着いたらまずは皆に紹介しよう」
父様がそう言ってくれた。俺がソワソワしているのに気付いたかな?
初めての領地の外にワクワクが止まらなかった。(夜の散歩は近隣の森だからノーカンです。)
学園に入ったらいろんな事が出来る。修行に勉強。錬金や出来るなら鍛冶っぽいこともしてみたい。
ただ、精神年齢は23歳なので心の中は不安でドッキドキである。
「…はい」
俺は頑張っても気の抜けた返事しか出来なかった。
「まぁ、イッセイ。珍しく緊張しているの?」
「…はい。正直そうです」
「ははは。イッセイが緊張とは珍しい。明日、精霊が降ってくるかもな」
『明日、精霊が降ってくる。』は、この世界のことわざだった。
雪じゃないんだ。と、思ったが【あり得ないものが降ってくる】と言う意味なので降ってくるのは別に何でも良いのだろう。
「王都を守るカサリナを始め。次男のジョシュア、長女リナマリアとお前の姉のカレンは学園から戻ってくる。皆、お前に会えるのを楽しみにしている。先程も言ったが特にカレンはこの屋敷に来てからずっとお前に会うのを楽しみにしていたからな。残念だが長男のアレンは余所の領地に学びに行っていてな、今回も会えない。もっともお前も【洗礼の儀式】が終わればこちらに住んで学園に通うことになる。そうすればそのうちに出会う機会もあるだろう」
父上は笑顔で頭を撫でてくれた後、母上と話をし始めたので俺は場所の窓から外を眺め景色を堪能していた。
ふと、家族の事を思う。
カサリナ母様は最後に会ったのは二年前カレン姉様が学園に行く際、父様に付いてこちらに来たときだ。
母様がカレン姉様の入学式に参加するため俺の子守に来てくれたのだ。
料理が得意な人で色んな料理を作ってもらった記憶がある。側室の子である俺の事も本当の子にように大事にして貰った。勇者の力は【炎魔法○】で料理を魔法で作るパワフルな人だった…
続いてリナマリア姉様は10歳年上の姉さまで、カサリナ母様と一緒に俺に会いに来てくれた。だから最後に会ったのは13歳の時だ。
【闇魔法△、光魔法△】の『ダブル』の力を貰ったらしく。学園でも結構有名人だ。基礎学年を終えた今も学園に残り魔法の研究をしていた筈だ。
性格はお淑やかな姉様だったと記憶している。
兎に角、カレン姉様の事を良く面倒見てくれたお陰で俺に被害が少なかった事を思い出した。
リナマリア姉様と双子のジョシュア兄様もその時一緒だったんだ。
【辺境の騎士・剣技◎】という父様の生き写しと言われている。
勇者の力から分かる通り剣技が非常に高く達人級に成れると言われている。
長男のアレン兄様が戦いの才能を持っていないためジョシュア兄様が次期シェルバルト領の統治者となる予定だ。
俺と会ったときも剣ばかり振っていて、俺に打ち込みを頼んできたんだっけ…3歳の俺にだぞ。
「イッセイ。なかなか筋が良いな」等と言われて危うく修行がバレる所だった。
そして、最後に姉のカレンだ。
カレン=ル=シェルバルト。俺の実の姉で2こ上で俺が3歳まで領地の屋敷で一緒に暮らしてた。生まれた当初の俺が生まれて親を取られたと怒ってたっけ。お転婆でガキ大将でよく俺に絡んで来ていたけど…今はどうなんだろうか?よくぶっ飛ばされたっけ。お菓子も取られたっけ…
あれ? 俺あんまり会いたくない気がしてきた。
ドンドン過去のトラウマが甦ってきてテンションだだ下がりになっている。
出来れば今すぐ屋敷に帰りたい気持ちになるが、そんな俺の気持ちは知られることも無く馬車は城下の門を潜ろうとしていた。
・・・
--チンチンチンチン…
--ガヤガヤ…
イヤッシャイ、イラッシャイ…
ヤスイヨ、ヤスイヨ…
王都の入城門へと続く道。色々な音や人々が見えてきた。
どうやら都付近と繋がっているこの辺は、鍛冶屋や何かを叩き売りしている人が多いようだ。
鍛冶屋は外に出ている冒険者のための簡易修理場所だったりするのだろう。冒険者らしき人達が鍛冶を頼んでいた。
それに、何ていうかたたき売りしている人ってどの世界でも
「うわ~。おっきい。」
貴族専用の通用門を抜け王都に入る。その際に上を覗き門の大きさを感じた。
機能する城壁や城っていうのは崩す目的で建てられていると聞いたことがある。
何でも自ら崩す事で突破され難い壁にしてしまうのだとか。
確かに要所、要所に木の杭が柱に建てられていた。
更にはこの城は中から出ることが困難な作りになっている。
城壁が高く、沿ったような形になっておりクライミングが難しい。
天板には木製の忍び返しが付いており。
その木も隣国特産の【歩行樹】というモンスターから取れる木を使って居る。
何でもどの様な木より強固で、魔法で操る事が出来る珍しい木なんだと。
どうやらこの木が不法侵入者を捕まえに行くらしい…。
某セキュリティー会社も真っ青な話だ…。〇コ○してますか?
ベタなファンタジー設定の話なのだが顔がにやけてしまう。
城門を抜け暫く馬車で歩く。すると幾つも道が分岐する所に出た。
噴水があって人が沢山集まっていた。
「ここがガブリエルの噴水だ」
父様の説明が始まった。
何でもここが女神ガブリエルがこの国のために水を掘り当てた場所なんだそうだ。
国のシンボルとして町の中心としているらしい。
ここの分岐が王城、貴族街、商用区、行政区、下町などなどに繋がっているらしい。
なるほど。本当に国の中心な訳だ。
馬車を操る従者さんは通りなれた馬車用の道をスーッと進んでいった。
この国は歩行者レーンと馬車用レーンを分けているのだ。
簡素な垣根で隔たって居るだけなのだが、これなら安全だし、速度も出せる。
なるほどよく考えている作りだ。
横を向いていたら商業区が顔を出す。まさにこの国の顔だけあって、凄い賑わいだ。軒並み並んだ露天に商店が並び、当たり一面を行き交う人、人、人。埋め尽くされていた。
俺は馬車専用の道通りながら商業区の人の熱気をずっと見ていた。
経済は人の量と品物の数に比例する。民が旨味を感じなく成ればその土地は人が減り、品物の質は落ち税率は下がる。父上の領と王国の民達の顔は同じ顔色をしているので一安心だろう。
「…イッセイ。元気が出たようだな」
「はい、父上。景色を見ていたら自分の不安が小さいものだと悟りました」
「そうか」
父上は苦笑いで頷いてくれた。…何か間違えたのだろうか?
まぁ良い。馬車はどんどん奥に進む。
やがて、商業区の慌ただしい地域を抜けると続いて見えてくるのが、行政区だった。学園や何かの施設のようなものが見えてきた。
他の建物より一際目立つその建物は、斬新な意匠デザインでこの世界と似合わない形をしていた。
あれって、まさか……
気になったのが白くて高い何処からどう見てもコンクリートで出来た建物だった。
景観条例があるのなら真っ先に取壊しされそうな、そんな違和感しか沸かない。
「と、父様…。あの建物は何でしょうか……」
「うん?」
俺が指す指先を覗き込む父様。
「あぁー」と、言ったあとに
「王都魔導研究所か」
と言った。
その後の説明で博物館兼研究所みたいなあやふやな返事が返ってきた。
どうやら父様にも良く分からない場所らしい。
馬車は怪しさ満載の行政区を抜け坂を登っていく。
そして、坂の天辺付近まで登ると空気が一変した。
お城や大聖堂などの姿がどんどん見えてきて、高級そうな大きな屋敷があちらこちらに顔を出す。
貴族や豪商人等身分の高い人達が王都で暮らす街だ。
皆庭が広く、建物がでかい……なんとかヒルズみたい。
ここに住めるのはただ金を持っているだけでは無理なのだ。王家に対し貢献度があるか、ないか。で、ここの土地に住む権利が与えられる。
国政に関わるもの。
戦争で功績を上げたもの。
国が潤う稼ぎを生み出したもの。
国にとっての不利益なものの排除。
などなど…そう言った難関を超えた者が爵位と同時に居住権が与えられる。
大変名誉な事ではあるがお家取り潰しという事もあり得るので一概に良いとも言えない。
一代限りの男爵でもない限り運営等にも気を使わないといけないのだ。
もちろん、こう言った貴族街に住むのはメリットが多い。
貴族限定の商人が付くし、王都への出入りは原則自由だ。行政区内も割と気軽に見学できる。
もちろん。王立図書館にもである。
ぐふふ。これを気に毎日通ってやるんだ。
オラ。ワクワクが止まんねえぞ!
「もう
御者さんが声を掛けてきた。すると、目の前に大きな門が顔を出す。
貴族街に行くにはもう一つ通過する門がある。
「これはこれは、シェルバルト卿。長旅ご苦労様です。」
門を守る門兵さんが、馬車を見るなり近づいてくる。
「あぁ、アーサー。いつもご苦労さん。覚えておいてくれ、今度から王都に住む息子のイッセイだ。」
父様は俺の背中を叩きながら門塀のアーサーさんに紹介してくれた。
「イッセイ=ル=シェルバルトです。今後ともよろしくお願いします。」
頭を下げる。
アーサーと呼ばれた兵士は苦笑いし、
「イッセイ様。我々のような兵に頭をあげてください。我々は、皆様の安全を守るのが仕事ですので、皆様の顔と名前を覚えるのは職務なのですよ。」
アーサーさんから恐縮された。父上も俺の対応に苦笑いしていた。
「すまぬ。アーサー。こいつは貴族意識が薄くてな。昔からこうなのだ。苦労を掛けるがよろしく頼むぞ。」
「ははー。」
父上の言葉に背筋を張って返すアーサーさん。
俺の行動って貴族っぽく無いのは自覚している。父様の事を見ているし、他の嫌な貴族などもよく見ている。だから悪いと思ったことは特に真似しないようにしているだけだ。金持ちだからとふんぞり反っていたら民との溝なんて一生ふさがらない。
かと言ってふんぞり返る必要がある事もある。それはそれで対応するけどね。
必要に応じて貴族を使い分けているだけですよ。
馬車は丘の上を更に登っていきとある広い屋敷の前で馬車は止まる。
イッセイは屋敷を見上げるとざっと16DDK以上はありそうな屋敷だった。
何故かわからないが生唾を飲んでしまった。
「さて、着いたぞ。」
既に家の使用人の人達が門の前で待っており執事らしき初老の男性が馬車の戸を開く。
「旦那様、奥方様、お坊っちゃま。遠路ご苦労様でございます。」
「ふむ。メフィス。変わりはないか?」
「はい。旦那様。全て言いつけ通り進めてございます。」
父様と執事さんのやり取りをきいて、あっ貴族っぽい。
と、思ってしまった。実際、貴族なのだが父様、母様、俺の順で馬車を降りる。
父様は俺が降りると手招きし隣に立たせてくれた。
「我が息子。イッセイだ。皆のもの頼むぞ。」
「「「「「ははー。イッセイ様。ようこそ王都へ。」」」」」
俺は王都に着いた。
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